赤外線サーモグラフィーの原理について徹底解説してみた。

サーモグラフィです。

「サーモ(thermo)」とは、”熱”を表す結合辞、と英語の辞書に書いてあります。
同じく「グラフィ(graphy)」とは”図化、書法”を表す結合辞です。
合わせると「熱の図化」、要するに熱の量や変化、分布などを画やグラフにする(または記録する)という意味になりますね。
なんだ、自記式の温度計のことか。
そのとおり、Thermographを辞書で引くと自記温度計・温度記録計って。
普通の温度計はサーモメーター(Thermometer)って言います。体温計も一緒(ClinicalThermometerとも言うらしいです)です。

ところがサーモグラフィはThermographyという綴りなので、最後に”y”が増えます(語尾の”y”は”○○すること”という意味になるそうです)。これは元々医療用のものを指していたようです(これも辞書に載ってます)。確かに体のどこが熱持ってるかっていうのは、診断に影響しますね。
同じように一様に熱した対象物の温度が場所によって違っていたり、熱源の影響が場所によって違ったり、はたまた場所毎の温度変化の速さなどを計測出来れば、すなわち製品の製造ムラ、製造設備点検、非破壊検査、などに役立ちます。

さて、サーモグラフィは”熱”を計測するものだということがわかりました。
じゃ、熱って何でしょう。

熱とは

国語辞典を引くと、
熱:熱いこと、熱さ、温度が高い、温度を高める力、高い気温、・・・
と出てきます。

物理屋の答だと、
熱:温度の異なる物体間のエネルギーの流れ
となります。なんのこっちゃ。

つまり、温度が高いだけでは”熱”って言わないの、高いとこから低いとこへ流れて初めて”熱”だよ、ってことですね。
うーん。
「熱が出た」は間違いで「体温が上昇した」が正しいみたい。熱出そう・・・

温度計(Thermometer)も直訳したら”熱計”なので、英語圏でも国語辞書に近い感覚の人が多いんでしょうね。

さて、なんで延々と熱の定義の話をしたかというと、熱は温度が高いだけでは発生しないということ。温度の高い方から温度の低い方に”流れ”ることで初めて”熱”として扱われます。

熱の伝わり方

熱の流れは伝導、対流、輻射という3つのルートで伝わっていきます。
伝導は触ると熱い、対流は熱いものが上に来る、輻射は離れてても熱い。
サーモグラフィはこのうちの輻射熱の計測を行います。

輻射熱の実感としては反射式ストーブ、たき火、日光などが身近ですね。いずれも体温よりも高い熱源によるものです。
じゃ体温よりも低い場合には輻射熱は出ないのでしょうか?
プレデターって映画にあった様に人の発する熱は感知することが出来るので、体温程度でも輻射熱は出てるようです。
では、どのくらい低い温度まで輻射熱を発しているのでしょうか。
じつは-273.15℃(絶対零度)にならない限り分子運動が止まらないので、熱が出ます。絶対零度になったら分子の運動が0になるので熱は出ません。
つまり、物体は分子運動のエネルギーを外向きに熱として放射しながら絶対零度まで温度が下がって行くもの、なんです。

ほっとけば絶対零度になるって、実際にはなってないですよね。南極で外に物置いててもせいぜい-60℃くらいです。
これ、実は太陽からの輻射熱で地球全体が暖められているからで、太陽から遠い土星辺りでは-180℃位なのでメタンの雨が降るといいます。もっと離れるともっと下がります。
※厳密に言うと絶対零度でも分子運動は完全には停止しないそうです。

要するに絶対零度以外のあらゆる物質からは、多かれ少なかれ輻射熱が出ているということですね。
この熱(エネルギーです)はどのような形をしているのでしょうか。あんまり熱いと痛いので小さな槍が飛んでくるとか、そんな事はありません。みんなよく知ってる電磁波の種類である赤外線として飛んできます。

出ました、赤外線です。
こたつが温かったり、焼き芋を焼いたり。赤外線があると温かい(熱い)んだ。と思っているあなた、実はちょっと違うんですね。今述べた様に、たとえ氷点下100度の氷でも赤外線は出てるんです。ただその量が少ないだけで。
反対に人間の体温で発する赤外線の方が強いので、差し引き寒いことになるし、零下100度の氷の方は人間からの赤外線で少しはほっこりすることになります。
でも相手が100℃だとすると、そちらの赤外線の方が強くなるので、人間の方がほっこり(というか火傷)するということに・・・

まとめると、
・絶対零度以外のあらゆる物質からは赤外線が出ている。
・その量は温度が高いほど多い
・温度の違う物体が2つあると、双方の赤外線の量の差し引きで熱のやりとりが起こり、双方の温度が近くなる。
・放射されるエネルギーの方が受け取られるエネルギーよりも大きい。
→放射した全部のエネルギーが相手に届くわけではなく、途中で損失があるため。

黒体

ここまで来ると赤外線の量を計測したら輻射熱の計測が出来るので、その元の物体の温度が求められそうですね。
サーモグラフィは近いぞ。

実は
「黒体から放射される全エネルギー量はその黒体の絶対温度の4乗に比例する」
W=σT4
:W 単位面積あたりの全輻射エネルギー(W・cm-2)
:σ シュテファン-ボルツマン定数(5.67×1012 W・cm-2・K-4)
:T 黒体の絶対温度(゚K)
という
「シュテファン・ボルツマンの法則」(Stefan-Boltzmann Law)
が存在します。

※ヨーゼフ・シュテファン Josef Stefan 1835/3/24~1893/1/7
当時のオーストリア帝国領(現在のクラーゲンフルトKlagenfurt)で生まれたスロヴェニア人の科学者。
1879年にこの法則を見出した。

※ルードヴィヒ・ボルツマン Ludwig Boltzmann 1844/2/20~1906/9/5
オーストリア帝国のウィーンWienで生まれたオーストリア人の科学者。
Josef Stefanの弟子で、1884年にこの法則を理論的に証明した。

ところで”黒体”っていったい何なんだ?
いきなり出てきたよくわからん用語ですが、これは
「全ての光を吸収する物体」
と定義された、理論上の物体です。
要するに、”理想気体”や”剛体”、”質量0の○○”といったものと同じで、理論を組み立てる場合の簡略化のための仮定です。実存の物体とは異なりますが、実験結果などで何らかの関係性をもたせることで実際の計測に利用出来るというわけです。
この関係性が「放射率ε(イプシロン)」で、理論上の黒体(完全黒体)ではこれが”1”になります。全波長のエネルギーを吸収します。
なお、放射の場合は全波長ではなく、黒体の温度に対応した波長で放射します。
逆に全く吸収せず全部反射してしまう様な仮定の物体(“鏡面体”といいます)の放射率は”0”になります。
放射率εはこの0~1間の数値を取ります。

ということで、この法則が意味するところは
「どんな物体でもその絶対温度(゚K)の4乗に比例するエネルギーを放射している」
ということです。

放射する単位面積あたりのエネルギーを計測してやれば物体の温度がわかる。
エネルギーは赤外線で飛んでくる。
赤外線を測れば物体の温度が”触らずに”わかる。

これが赤外線サーモグラフィの原理です。解決しました。
え?してない?

疑問1:太陽からは赤外線以外の可視光線なども飛んできてるんですが、これは放射エネルギーには入らないの?
疑問2:赤外線を測るってどうやるの?
疑問3:放射率はどう影響するの?

そうですね、では説明。

放射されるエネルギーは?

疑問1:
太陽からは赤外線以外の可視光線なども飛んできてるんですが、これは放射エネルギーには入らないの?

回答1:
「シュテファン・ボルツマンの法則」では、黒体の温度と放出される全エネルギーの関係が明らかになりました。
この放出されるエネルギーは赤外線に限りません。でも、元のエネルギーが少ない(温度が低い)と赤外線しか出ません。エネルギーが多くなるにつれて赤外線だけではなく他の波長の電磁波も出てくることになります。
イメージとしては山が高くなると裾野が広がっていくイメージです。
ただちょっと癖があって、波長の短い方へ頂上が移っていくようになります。

この状況を表すのが「ウィーンの変位則」や「プランクの放射則」(Planck’s law)です。

「ウィーンの変位則」(Wien’s displacement law)
とは、
「黒体からの輻射のピーク(一番強い)波長が黒体の温度に反比例する」という法則です。
λmax=b/T
:λmax ピークの波長
:b 比例定数(b= 2.8977729×10-3 K・m)
:T 黒体の絶対温度

「プランクの放射則」(Planck’s law)
とは、
「黒体からの輻射量が黒体の温度と輻射の波長の関係によって決まる」という法則です。
I(ν,T)=(2hν3/c2)・(1/e(hν/kT)-1)
:I(ν,T) 分光放射輝度
:ν 周波数
:T 黒体の絶対温度
:h プランク定数
:k ボルツマン定数
:c 光速度

※ウィルヘルム・ウィーン Wilhelm Wien 1864/1/13~1928/8/30
ドイツの物理学者。1893年にこの法則を推測。ノーベル物理学賞(1911年)。

※マックス・プランク Max Planck 1858/4/23~1947/10/4
ドイツの物理学者で「量子論の父」と呼ばれる。1900年にこの法則を発表。この法則内に含まれる定数h
(プランク定数 h=6.626069×10-34)が物理学の基礎定数の一つ。ノーベル物理学賞(1918年)

ウィーンの変位則によると、黒体の温度が上がれば輻射する電磁波(最初は赤外線)の波長が短くなって行き、概ね700℃位からは可視光も含まれて人の目にも見える様になってきます。どんどん温度があがって6000℃位になると可視光全体がピークになります。実はこれ太陽の温度で、太陽光線が白色に見える(様に人間が進化した)のはこのせいです。
話は外れますが、恒星の色はこの法則に従っていて温度の低い恒星は赤っぽく、高くなって行くにつれて黄色~白~青と変化していきます。これも一種の放射温度計ですね。

プランクの放射則によると、電磁波のピークは波長の短い方にシフトしながらピーク値そのものが大きくなっていきます。つまり輻射のエネルギーが大きくなって行っているわけです。ということは当然ですが温度の高いものの方が放射している電磁波が強いということで、それはすなわち受ける側にとって”熱い”ということです。
たき火や反射型ストーブが温かい(熱い)わけはこれでした。

ということで答は「温度が高くなれば赤外線だけではなく可視光も放射エネルギーとして出る様になり、その温度は概ね6000℃以上」です。でもそんな温度でそばにいたら温かいどころではないですね、太陽が遠くでよかった。

測り方

疑問2:
赤外線を測るってどうやるの?

回答2:
普通に考えると飛んでくる電磁波の強度を調べればいいと思いつきます。
細かい説明は難しいので省きますが、熱型と量子型の2方法があり、熱型は電磁波(赤外線)のエネルギーを熱に変えて計測するもので、量子型は電磁波が分子原子に当たるとそこから電子等が飛び出してくる現象を利用して計測するものです。
一般的に量子型の方が応答速度が速く感度もいいそうですが、検出部の素材によって感度の良い波長が決まってくることと、検出部の冷却が必要なので大型化してしまうなどの欠点があります。
ということで、一般的には熱型(応答速度が遅く感度も今一であるが、小型化が楽で常温での使用も可能)が多く用いられます。

その熱型のセンサーにはサーモパイル素子が最も多く用いられているようです。
おっと、サーモパイルって何?

サーモパイルの正体は熱電対です。熱電対1個だと起電力が小さいので、直列にたくさん(100個とか)繋げて微小な温度変化を検出できるようにしたものをサーモパイル(Thermopile:熱電堆、熱電対列)といいます。
これを温度測りたい(電磁波が出ている)方に向けるんですが、このままだと太陽光などで誤差が出るので赤外線(だけ通す)フィルターが付けてあります。前の方に書きましたが、概ね6000℃位にならないと可視光線は出てこないので、通常は赤外線が取れればOK。
サーモパイルの前面は真っ黒に塗っておいて、熱の吸収をよくしておいて。
でもサーモパイルの温度がそのまま熱源の温度ではないです。その温度変化によって赤外線量を計測し、放射熱源の温度を算出することで初めて対象の温度がわかるという仕組みです。

放射率など

疑問3:
放射率はどう影響するの?

回答3:
例えばサーモパイルの前面を黒く塗るんですが、これが完全黒体に出来るかといえばそうではないので、ここで吸収出来る熱量はεの数値分少ないことになります。
これは熱源にも言えることで、例えば何かの物体の表面温度を計測しようとしてサーモグラフィをそちらに向けたとしても、

・物体(放射側)は完全黒体ではないので、ε分だけ小さい放射しか出ない
・センサー(吸収)側が完全黒体ではないので、吸収熱もε分だけ減る

ということなので、正確な値を求める場合にはεが必要になってきます。
調べてみると、
磨いた金属は少数の例外を除いて概ね0.1程度以下
煉瓦、石膏、コンクリートなどが概ね0.85~0.95
というふうになっており、対象物によっては凄い差になります。
※これらの数値は対象物の温度、赤外線の波長、表面状態によってかなり変わるということなので、あくまでも”このぐらい”という参考です。

実は世の中には「黒体テープ」なるテープが存在します。
ものによって放射率が0.94だったり0.95だったりしますが、これを計測したいものの表面に貼ってから放射率をあわせた放射温度計で測ると正確な値が出るという代物です。
テープ剥がして同じ温度が出る様に設定放射率を調整すれば物体の放射率が求められるというわけで・・・

ところで人間の体温(これが目的で放射温度計を導入される場合も多いようです)を計測するときにはどうなるでしょうか。
一人一人を裸に剥くわけにはいかないので、予め露出している場所(普通は額)の温度を計測することになります。
ところが、

①皮膚の温度は体温より低く、気温にも影響される。
②空気や空中の水分などで届く電磁波(赤外線)の量が変化する。
③体温計として使用する場合には、医療機器としての認証が必要。

③は本気の体温測定では必要ですが、たくさん人が居て一度に見るなんてのには向かないですね。医療目的で使うと法律違反になります。ただ①の”皮膚の温度は体温より低い”ことに対しては、体温計の各メーカーのノウハウで「額温度→舌の下温度や、額温度→腋の下温度、ものによっては額温度→直腸温度(お尻の穴の中の温度)」に変換しているのでかなり正確に出るようです。
※ちなみに直腸温度>舌の下温度>腋の下温度だそうです。
さらに同時計測した気温を換算に使用することで①の問題を回避し、計測距離を近づける(額から1~3cm程度)ことで②の影響を極力排除する様に考えられています。

そうそう、放射率εでしたね。人間の皮膚の放射率は色々調べると常温でε=0.98~0.99位になってます。概ね0.98の方が多いのですが、状況によってはε=1.0という乱暴な計算をしているものも・・・・
ということで体温計測の際には直前の①~③に比べると放射率εの影響は少ないようです。

でも黒体テープよりも人間の皮膚の放射率εの方が大きいってことは、皮膚の方が”黒い”わけで。

使用上の注意

さて、一応サーモグラフィの理屈のようなものを説明させて貰いましたが、使用の際には気をつけていただかないとまずいことがいくつかあります。

まず、計測値が気温や空中の水分などで影響されること
→雨降りの時や対象物と計測機の周辺の気温が違うときには注意しなければなりません。

次に、赤外線を計測しているため、ガラスの影響をもろに受けること。
→普通にはガラスの放射率は0.8~0.9位なので、全然透明じゃないし。
いや、透明で光が見えるよっていってもそれは可視光で、ガラスは可視光はよく通すけど赤外線(波長が2μm
位よりも長いの)は吸収されます。吸収されるから放射率が大きいのです。

続いて、測定対象から離れると誤差が大きくなります。
→赤外線が通ってくる道筋での妨害(風、水蒸気、気温変化など)に加えて、到達エネルギーが小さすぎたり、他の熱源も計測するなど、精度の良い計測が難しくなります。出来るだけ近くに。

そして、見えなくても検出するものがあります。
→湯気、蒸気、陽炎などは透明に見えても赤外線を出しています。これは意外と気がつかないことが多いので注意してください。
うまく使えば非常に便利な機械なので、皆さんも一家に一台。どうですか?

※輻射は輻の文字が当用漢字にないので、最近は”放射”と書いてあることも多いようです。

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赤外線サーモグラフィが1µmの差で輸出許可に引っ掛かる?!

赤外線サーモグラフィが1µmの差で輸出許可に引っ掛かる?!

当社レックスには、上の写真のような赤外線サーモグラフィ2機種があります。
片方はいかにも計測器という感じですが、もう片方は見た目デジタルカメラです。
見た目はもちろん使い勝手も違いますが、法律上の違いもあります。
見た目計測器の方は、輸出貿易管理令の規制リスト該当品で、日本国外に持ち出す場合は、経済産業省の輸出許可が必要となります。

この輸出許可を取るのには、2カ月くらい掛かるそうです。
以前、テレビ番組の制作会社から外国のロケで使いたい、というお問い合わせをいただいたことがありますが、そのせいで残念ながらボツとなってしまいました。

その頃は、TVS-200という機種しかなかったので、どうしようもありませんでした。
今回、追加された2機種のうち、見た目デジタルカメラF30Wは規制リスト非該当です。

したがって、メーカーなどの非該当証明(判定書)さえあれば、国外への持ち出しができます。

では、どこが違うのかというと...
センサーの「測定波長」です。

TVS-200TH6300Rは、8-14µmとなっていますが、F30Wは8-13µmです。
たった1µm波長が違うだけですが、この差が大きいわけです。
(参照 : http://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html )

 

輸出貿易管理令・省令第9条の別表リストには、「要素素子を2次元に配列した赤外線熱型フォーカルプレーンアレーであって、それぞれの要素素子がフィルターのない状態において 8,000ナノメートル以上14,000ナノメートル以下の波長範囲で感度を有するもの」 と記されています。
(ちなみに、フォーカルプレーンアレーは ” Focal plane array “で、訳すと「面配列焦点」という意味になります)

1,000ナノメートルは1マイクロメートルなので、8-14µmは該当するが、8-13µmは該当しない、というわけですね。
多分、計測器としての性能的には、この1µmの差で、測定温度範囲とか温度分解能とかが違ってくるのでしょうけど、私には、国外に持ち出せる、持ち出せない、の差はもっと大きいような気がします。

もし、外国で赤外線サーモグラフィを使用する必要に迫られた際には、ぜひ当社レックスにお問い合わせ下さい。

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赤外線サーモグラフィーとは?3つの特長を分かり易く解説!!

赤外線サーモグラフィーが、最近熱いです!
見た目は、本当にただのデジタルカメラみたいなのですが、そんな小さな機械で、なんと赤外線を見ることが出来るのです。

そもそも、赤外線サーモグラフィーって何なのでしょうか?
ここでは、赤外線サーモグラフィーについての基本をまとめさせて頂きました。

 

 

赤外線サーモグラフィーとは?

単純にいえば、温度計です。
原理は、あらゆる物体には、温度に応じた赤外線を放出しており、その温度に応じて測定器内で、カラー別に処理し、わかりやすく映像として表示されるのです。
今、この測定器がキテルのは、様々な用途での使用・検査ができるからなのです。
インフルの検査みたいに、人の体温を測るもよし、構造物の劣化の診断(コンクリート剥離・ひび割れ)や電気回路配電の保守点検等、さまざまな分野でもちいられています。
測定方法が非接触なので非破壊機器の検査ができ、短時間で広範囲の測定が簡易に、しかも使用にあたって有害物質等の不要なエコなウルマティックな測定器なのです。

さあ、新たな可能性を発見するのにも、一度ご利用ください(笑)

空港などでは、入国者の体温をサーモグラフィーで監視しているそうですよ。
確かにサーモグラフィーで見ると、体温が色分けではっきり分かるので、水際対策にはかなり有効だと思います。

当社レックスでも、このところサーモグラフィーのお問い合わせがぐっと増えています。
レックスでは、デジカメタイプの操作が簡単なものから、構造物診断にまで使える本格的なタイプまで各種サーモグラフィーを取り揃えております!
さまざまな場所から大勢の人が出入りする展示会場などでは、臨戦態勢のようです。

実際、サーモグラフィで写真を撮るとこんな感じです。


(かなりピンボケで撮ってしまいました。ホントはもう少し鮮明に撮れます)

この3人はオレンジ色なので、近付いても大丈夫そうですね。右の男性はちょっと顔が火照り気味のようですが...
赤→白だとヤバいです。

もし、国内での感染がニュースになったら、たちまち品切れになってしまうかも知れません。
レンタル機器が稼動するのはありがたいのですが、そんなことにならないように願うしかないですね・・・。

 

 

サーモショットのメリット・デメリット

また、このサーモグラフィーという機器。
非常に便利な部分が多いんです!
非接触で放射されている温度エネルギーを赤外線カメラで捉え、それを画像として視覚的に表示してくれます。
一瞬で温度の高い低いが読み取れますし、光源が必要ないので暗闇でも大丈夫です。
煙などによって視界が少々悪いところでも、サーモグラフィーなら対象物を認識することも可能です!
すごく便利なんですが、同時に大きな弱点を持ちあわせていることも事実です。。。

例えば、ガラスなどは人間の目には透過して見えますが、サーモグラフィーには「ガラス」という物体として認識してしまうわけです。
そうするとガラスの向こうに見えているものも(人間の目では)サーモグラフィーには見ることはできません。

他にも、屋外で計測をする場合などは、電線等思わず日常生活では無視して見てしまっているものが計測対象物を遮ってしまっていたりすると、計測ができなくなってしまいます。
そういった、不利な条件も挙げればキリがないのですが、逆に言うと計測の時には、そういった計測の邪魔となるものを1つずつ潰していくということが必要になってきます。
(物理的に壊すわけじゃないですよ~)
計測する角度であったり、時間帯であったり、屋内であれば空調を前もってつけておいて部屋の温度を一定にしておいたり(これも厳密には難しいですが)など・・・・。
しっかり計測する対象物などを下見してもらって使うということが肝心です。

 

 

 サーモグラフィー の凄いオプション!

heri8_05

ラジコンってしたことありますか?
スネ夫がよくのび太に見せびらかしてましたよね(笑)
特に「ヘリコプター」なんですけど、そのヘリコプターが借りられるってなったらどうしますか?

サーモグラフィ用ラジコンヘリ HERI8-W7000F

じゃん!

サーモグラフィー用ラジコンヘリ』っていいます!

主に、空撮用として、
高層ビル外壁診断・ソーラーパネル劣化診断など、人が立ち入れない場所で使うことができます。
高所の構造物検査や、災害現場の調査にてお役に立てるのではないかなぁ、と思います。
ヘリコプターを操縦してみたかった方って結構いるんじゃないですか。
はたまた趣味で飛ばしている方とか。

そんな方に、とっておきのオプション品ですよね!

詳しくは、以下のサーモグラフィーの型番の種類をご覧下さいませ↓↓

R300 R300Z R300S H2630 H2640

※各ページ、オプション品に関する記載はすべて同じです。
※レンタル時にはメーカーによる講習が必要となります。

 

測定|2016/12/13|Comments (2)

今でも通用する高精度ティルティングレベル”名機N3”はこんな器械だ

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N3

N3です。名機です。
現在のライカジオシステムズ(ライカ)の測量機のブランドがまだ「ウィルド(WILD)」だった頃、民生用世界最高レベルの精度を誇ったティルティングレベルです。

※レベル:Level
ティルティング:tilting(以前はチルチン(グ)とも読まれていた)

以前紹介したセオドライトのT3000と並び称される名機ですが、こちらの方はずっと汎用性の高い、エクセントリックではない名機と言えます。
一番大きな違いは、N3が測量機として国土地理院に登録されていて(一級レベル登録)公共測量(一級水準測量)に使用できるというところでしょう。
(一級レベル:登録番号1 登録年月日1975/1/10)

 

精度を表す1km往復標準偏差が±0.2mm

どういうことかというと、ある点の高さを0として、1km離れた点の高さを求める為に水準測量を行います。(水準測量がわからない人は調べてね)
で、1km離れた点と最初の点の高さの差が求められます。
続いて今度は逆に水準測量をしながら戻ります。最終的に元の点まで戻ったときに高さが0に なっていれば誤差無しなんですが、N3ではそれが±0.2mmに収まるという話です。
一級水準測量ではレベルと標尺の間隔が30m以内という規定があるので、1km先まで行こうとするとレベルの据付が最低で17回、データを読み取る回数が34回、往復なので倍にして34回と68 回。
これだけの作業を行って0.2mm以内に収まるって・・・化けもんですね~

ちなみにこのN3の望遠鏡もT3000と同じくパンフォーカル式になっているので、近いところも遠いところも楽に視準出来ます。
パンフォーカルではない望遠鏡のレベルではどうしてるかって?
通常は倍率の大きいものを屋外用、大きくないものを屋内または近距離用として使い分けているそうです。

もうひとつ。
今現場で使用されているレベルはほぼ”オートレベル”ですが、N3は水平を手動で合わせるティルティングレベルです。専用ののぞき窓から1/4だけ見えてる2つの気泡管の高さを合わせれば望遠鏡が水平になっているわけなんですが、感度がいいので結構難しいです。
セオドライトの棒状気泡管の両端を”厳密に”合わせるわけですね。
ここをちゃんと調整しておかないと、前記の「1km往復標準偏差が±0.2mm」は絶対出ません。

 

具体的な計測方法

①高さの基準または計測の出発点に標尺を立てます。
(厳密な測量では標尺はインバー鋼などで出来た3m一本ものの”一級水準標尺”を用います)
②標尺から到達点の方向で30m以内の場所に三脚を立ててレベルを据え付けます。
(厳密な測量では木製の直脚(水準測量用の伸縮しない木脚)を用います)
③レベルの望遠鏡を覗き、(望遠鏡内の)水平視準線と重なる位置の標尺の数値を読みます。
(標尺の目盛とずれている場合は、マイクロメーターを使用して厳密に合わせます)
④読み取った数値を記録し、標尺を反対側の等距離の辺りに据え付けます。
(厳密な測量では標尺台を用いて、標尺の向きを変えるときに高さが変わらないようにします)
⑤前々項③と同じように、移動した標尺の数値を読み取ります。
(前の点と後の点で1セットです。先に測る方の点を後視点、新点の方を前視点といいます)
⑥前々項④の注釈にある標尺台を利用して標尺の向きを変え、②から繰り返します。
(厳密な測量では直射日光による影響を避けるために、N3に日傘を掛けます)
⑦参考:暗くて標尺の数値が読みにくい時は照明を付けます。

 

N3は測量以外の精密計測でも活躍

T3000と同じような精密計測です。といっても角度や距離が測れるわけではないので、もっぱら高低差を計測することになります。
え?
測量と変わらん?
いや、測量で必要とされる精度とはまた違うので・・・

では実際に用いられた状況を紹介いたしましょう。

その①:精密機械工場の床

某コンピュータメーカーの工場の建設の際の話です。組み立て室(だったかな)の床が傾いているとまずいということで、N3の出番がありました。室内での計測なので、一級水準測量用の3mのインバー標尺は使用出来ません。
で、こういう時のために用意してある1m以下のインバー標尺(長さは数種類あります)とセットでの出荷となりました。
このような短いインバー標尺も”工業計測用”のツールとしてちゃんとメーカーの商品ラインアップに載っています。さすがに短すぎて国土地理院への測量用機材としての登録/認定はありませんが。
なお、先ほど挙げた「インバー製3mの一級水準標尺」はちゃんと検定を取っております。

その②:長大橋の主塔

本四連絡橋を造っていた時代のことです。橋の根元にある背の高い構造物、主塔。
大型の橋なので、主塔の高さは200~300m。これ一本ものでは作れないし運べないので、高さ10m位のブロックを作り、現場で20~30個固定しながら積み上げて作ります。
この積み上げ作業の許容範囲(傾きや位置)は1mm!
ブロックを20個として2cm。200m上で2cmは1/10000になります。
主塔(というか橋梁)の施工目標精度は1/5000なので、各部の施工精度は1/10000~1/15000でやっていると聞いていました。
ここまでの話ではN3の活躍する気配は全くありませんね。話はここからです。
1mmの精度で10m角のブロックを積み上げていくってのはとんでもないことですが、そのブロックが組み立て時点で1mm狂っていたら?
話になりませんね。
じゃいったいあのブロックはどれくらいの誤差範囲で作成されているのでしょうか。

答:1/100mm

びっくりです。T3000を用いた三次元計測での精度が20~30μmなのに、こっちは1/100mm=10μmだと!
どうしましょう。
橋梁用のブロックで一番精度を要求されるのは高さです。現場で修正のしようがないからですが、ブロックのこっちの端とあっちの端(または任意の場所)で高さの差1/100mm以内になる様に加工するためにその検査機械が要ります。
そこでN3です。N3は高さ方向に関してはマイクロメーターを使って1/100mmまで読めます。
工場でブロックを作ります。N3を使って1/100mm以下で水平であることがわかっている床にブロックを置きます。ブロックの上端の各点をN3で計測して製作精度内であることを確認します。そうでなかったら再度加工。

凄いですよね。
主に作成してたのは神戸にある重厚長大な会社だったのですが、もっと凄いのはそれ使って計測してた技術者。
「俺はN3で1/1000mm読んでた」
って豪語する人が居ました。アナログの計測機なので、”メモリの間”を読む(推読といいます) ことで1/1000mmまで読んだ(つまり精度はちょっと怪しい)ということなんだそうですが、これやってみたけどガッチャガッチャマンには見えるけど読めませんでした。
余談ですが、後継(?)となるデジタルレベルNA3003は最小表示がデジタル0.01mmなので推読が出来ないため、先ほどの技術者によると「ありゃあダメだ、使えん」だそうです。

オプション

N3にはT3000ほどのオプションはありません。周辺機材でインバー標尺(測量用と工業用)、標尺台、直脚、日傘(!)。
本体直付けのオプションは接眼レンズ周辺のものです。

交換用接眼レンズFOKシリーズ

望遠鏡の倍率を変えるための接眼レンズ。パンフォーカルでも合わせにくい近距離や長距 離の視準の場合に標準のものと付け替えて使用します。

ダイアゴナルアイピース

望遠鏡を覗いて視準する際に、障害物があったり足場がなかったりという特殊な状況下で 使用されます。本体のアイピース(接眼レンズ)と付け替えて横や上から視準することが出来ます。
ダイアゴナル(斜め)ではなく視準方向と直角の方向から覗き込むのにダイアゴナルアイピースとは?
→横や上だけではなく斜め方向からも視準出来るという意味だそうです。

レーザーアイピースDL2

本体アイピースとの交換で取り付ける事が出来ます。これを付けると視準先に赤いマーキングが出来るので、どこを視準しているかがすぐにわかります。

このN3、触り心地も最高です。

といっても変態的な意味で言っているのではなく、T3000等と同じく”可動部分を動かしたときの動きが非常にスムーズ”なんですね。
通常、可動部分のガタを無くそうとすると動きがシブくなります。軽く動かそうとするとガタが増えます。いい機械は工作精度がよい(例えば回転部分が真円に非常に近かったり、軸が円の中心にぴったり合っているなど)ので、その間のどこかに”スムーズに回ってガタがないところ”があるはずです。
電気的な補正などが無い時代の計測機は、どんなものでもそれ自体の製作精度がそのまま計測精度みたいなもんですから、どんどん精度を上げていったわけです。
限界も当然あるんですが、その結果がN3T3000などに表れていると思います。
これ以降の計測機は電気的な補正や計算によって精度を確保しているものが多く、このアナログ最後の時代の計測機(他にもありますが)を評価する人はたくさん居ます。
何でもちょっと古い目がいいんじゃないかと思う、ちょっと古い目のガッチャガッチャマンでした。

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赤外線サーモグラフィーの画像を集めた写真集。

こちらでは、当社レックスの取り扱っているサーモグラフィーの画像をご紹介させて頂きます!

実は!
当社レックスのサーモショットを使って頂いたお客様から、絶妙のタイミングでこんな写真が~~~
良い絵が撮れました、とのことです。
計測に使う写真を「良い絵」と表現するところがさすがです。
お仕事への愛情を感じますね。
すごく可愛いので載せてみます^^
快く「HPにもじゃんじゃん使ってください!」とおっしゃっていただいたF様に感謝です。。。

これらの写真はサーモショットF30Wで撮影されたもの。
こうやってレックスの機械たちが、皆様のお役に立っているんだなぁと感動しました!

 

お次に!
上の写真は、レックスが誇る高性能サーモグラフィーH2630でとったレックス社員の写真です。

このように、温度分布が色の変化でわかるようになっているので、特別な知識がなくてもわかりやすい!
ということでさまざまな業種のお客様からたくさんのお問い合わせをいただいています。
基本的には、温度の変化があれば何でも可視的に判断することができます。
無限の可能性を感じますね。

用途は本当にさまざまありますが、今回のように人を写真に写せば発熱している人間のみをピックアップすることも可能です。
社員の体調管理もばっちり。
というわけです。

以前、新型インフルエンザの流行の際に、空港でこういった機器が用いられたということもあり、一気に注目を浴びました。
現在では、鏡にサーモグラフィー装置を内蔵し、覗き込むだけで体温を判断、そして社員の体調管理と出勤管理を同時に行うような便利なものも出ているようです。
(こちらは、今のところレックスに設備はありませんが。)

 

赤外線って?

そもそも赤外線とはなんぞや(絶対零度以上の全ての物質から放射されている目に見えない光)ということから、熱とは温度とはという普段、よく使う用語の意味合いまで、改めて勉強になりました。
そのなかで特に測定にダイレクトに関連する、放射・反射・透過について触れてみます。

放射について、赤外線の放射効率を表す放射率があります。
放射率は黒体という放射を100%赤外線エネルギーにする物体を放射率=1として定義しています。
この放射率が高いほど、赤外線を多く放射しているので計測しやすい物質といえます。
放射率は物質によって違います。

9N100003

この画像を例にとると、人の皮膚の放射率は0.98とされてますので、通常の体温よりは、低く計測されるわけです。
メガネの部分は、材質が、ガラスやプラスチックなので放射率が皮膚よりも小さいのと、反射の影響で温度が低く表示されています。
なので、表示されている1番の32.7℃は、異常ではありません。

よくインフルエンザ対策として、人の移動が多い検問にも使用されますが、その際は、周囲の相対温度での計測がサーモグラフィでは使用されます。
絶対温度を測定する場合は放射率の補正が必要になってきます。
他にも、放射率は角度や表面状態にも影響しますので、画像の顔の端が低く表示されているのはその為です。
そういった点の注意が、赤外線サーモグラフフィ測定には必要になってきます。

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測定|2016/11/21|Comments (0)