オキシゼムの付属消耗品、カーライムって?

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カーライムは酸素呼吸器オキシゼムに付属の消耗品です。
役目は呼気中の二酸化炭素を吸着して除去することです。

以上で基本的な説明は終わりなんですが、あまりにつまらないので例によって細かい話を続けてみます。

まず、オキシゼムという呼吸器の話からしましょう。

普通、ボンベに入った呼吸器というと、潜水士さんやダイビングする人が背負って潜るあれですね。名称は
普通に「シリンダー」って呼ばれてます。エアシリンダーとか。
で、僕ら素人が「酸素ボンベ」って言ったりするとバカにされるわけです。
「シリンダーの中身は(圧縮)空気で、酸素じゃないし。純粋酸素だったりすると呼吸するの忘れて死ぬし。」
まあまあ。

ということで、空気の薄い(あるいは無い)様な場所に行くために背負っていくというイメージです。
ところが安全用品の空気呼吸器が用いられるのは、トンネル(隧道って言います)の中や(準)閉鎖空間での作
業中に(酸素以外の)ガスが出たり酸素が急に減ったりして、酸素欠乏症(酸欠って言います)になるのを防ぐ
ためです。といっても常に付けていることは出来ないので(やはり重いです)、作業場所の近くに置いておい
て酸欠の警報が出たらすぐにマスクを被る、という使い方になります。これは普通に(圧縮)空気です。

今度はトンネルの外にいる人から見てみましょう。中で酸欠が起こりました。みんなシリンダーで呼吸をし
ながら出てきます。でも誰か足りません。助けに行かなければ。
というところで出てくるのが、みんなが持って出てきた緊急脱出用の軽いシリンダーではなく、もっと大き
く長く使えるシリンダーです。中に空気がもっと詰まっているので当然重いです。
そこで登場するのが酸素呼吸器オキシゼムなのです。

例えば10リットルの空気だと中に含まれる酸素の量は約2.1リットルです。ところが全部酸素だと10リットル
なので5倍の時間保つことになります。重量1/5ということなので、軽くていいですよね。脱出用のもこれだ
とありがたいんですが、なんでそうならないの?

ではここで空気呼吸器の構造のおさらいです。

空気呼吸器はシリンダーに圧縮空気(150気圧)を押し込みます。
外界と遮断できるマスクを付けます。
呼気はマスクからそのまま外へ、吸気はシリンダーから空気が供給されるような構造になっているので、シ
リンダーからの空気の供給が絶たれるまで呼吸出来ます。
容量が8.4リットルで、空気量は150倍の1260リットル(カタログ値)。人に依りますが概ね30分強くらい保ち
ます。

酸素呼吸器(正確には圧縮酸素循環式呼吸器)は、シリンダーに200気圧の酸素を押し込みます。
カーライムと氷(!)をセットします。
外界と遮断出来るマスクを付けます。
呼気はマスクから専用の通路を通って背中の箱に回ります。
呼気はこの中でカーライムの間を通るうちに二酸化炭素が吸収されます。
続いて酸素のシリンダーから供給された酸素と混合されて酸素濃度を21%に調節します。
そのまま冷却装置にはいって温度を下げます。
最後に吸気側の通路を通ってマスクに戻って、また人に吸われます。
シリンダー容量は1.7リットルで、200気圧で340リットル(カタログ値)。呼気中の酸素濃度は0にはならない
ので酸素の供給量は空気の1/5よりもかなり少なくなり、個人差はあっても概ね150分保つそうです。

オキシゼムの方が長時間保つし、シリンダー小さいし、いいことずくめのように見えます。が、次の項目を
見て下さい。

ライフゼムの重量は9.8kg。オキシゼムは12kgに冷却用の氷を合わせると13.4kg。4割増!
ライフゼムのコストはエアの再充填のみ。
オキシゼムも酸素の再充填(これは出来る場所がエアー以上に限定されるため難しい)が必要ですが、それ以
外のコストとして、カーライム(二酸化炭素吸収剤)は一度封を開けると反応が止められないため使い捨てに
なります。氷の供給も必要です。
手間かかって仕方ないですね。
どっち使います?
今までのところでいろいろな疑問が出たと思います。
・さっき酸素は危ないって言ったのに。
・なんで氷が要るの?
・カーライム(二酸化炭素吸収剤)の中身は?
・どうやって二酸化炭素を吸収してるの?
・もっと簡単(で安価)な方法はないの?

では回答を。

 

酸素を呼吸すると危ない?

人間が寝てるときにも呼吸を忘れないのは、空気中のわずかな二酸化炭素のおかげだそうです。これが
あることで「外部の空気を取り入れなければ」という反射が起きて自動的に呼吸が続くそうです。
ところが、純粋酸素など二酸化炭素を含まない”空気”を呼吸すると、体の方が安心してそれ以上の呼吸を
自動的にはしなくなってしまうんだとか。
それでも意識して呼吸を続けることが出来ればOKなんですが、ついつい”忘れ”てしまう(!)とアウト。
要するに血中酸素濃度ではなく、吸気中の二酸化炭素濃度で判断しているからなんですが、ちょっと怖い
ですね。これが潜水などの際に”酸素”ボンベを用いない理由のひとつだそうです。

 

なんで氷が要るの?

JISの規定(JIS M 7601:2001 圧縮酸素型循環式呼吸器)に「(吸気の)呼気温度からの温度上昇は,6℃以
下でなければならない。」という項目(5.1.2b)があり、その冷却剤として必要になります。
以前(20世紀)は13℃だったのが、”長時間使用時の負担軽減”のために変更になったそうです。

 

カーライムの中身は?

カーライムの主成分は水酸化カルシウム(Calcium hydroxide)で化学式はCa(OH)2です。
日本名では消石灰(slaked lime)で、これが概ね80%程度を占めます。

 

どうやって二酸化炭素を吸収しているの?

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
水酸化カルシウム + 二酸化炭素 → 炭酸カルシウム + 水

という反応を起こして二酸化炭素を吸収しています。

ちなみに
水酸化カルシウム Calcium hydroxide     Ca(OH)2 消石灰(しょうせっかい)
酸化カルシウム  Calcium oxide、quick lime CaO   生石灰(せいせっかい)
炭酸カルシウム  calcium carbonate     CaCO3
結構間違える人が居ます。特に水酸化カルシウムは強アルカリ性なので、手に付いたりするとすぐに
洗い流さねば。
うる星やつらに惑星教師CAO2というのが出てきますが、黒板用のチョークは炭酸カルシウムCaCO3または
石膏です。
念のため。

 

もっと簡単(安価)な方法は?

原理的には
1)呼気に酸素を混ぜて、割合を呼吸出来るレベルにする
2)前項で作成した気体(空気)を吸気にする。
以上なんですが、以下のような要件があるので(前に書いたものと重複もあります)、なかなか難しい
ところです

 

外気と混ざらないようにする

→酸欠だけではなく毒性ガスが含まれる場合もあるので、マスクや呼気・吸気の通路は密閉が必要です。

効率を上げるために酸素ガスを用いる

→空気の充填が出来るスタンドはたくさんありますが、酸素となると限られた設備でしか出来ないので
充填コストに運搬のコストなども含まれてしまいます。

長時間の利用を可能にするために、高圧ガス(酸素)を用いる

→200気圧の酸素を使用するので150分保つのですが、10気圧だと7~8分しか保ちません。
またそのために高圧用のシリンダーが必要になります。

吸気の温度を上げない

→放っておくと水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応によって発生する熱で、吸気の温度がどんどん
上がっていきます。割と簡単に40℃を超えてしまうそうなので、かなり息苦しくなるそうです。
冷却方法としては、クーラーを持って歩くわけにも行かないので今のところ氷がサイズや重量、効率
の面で一番にいいとか。
ドライアイス? 取扱がうまくできるならいいとは思いますが、コストが・・・

 

ということで、行かなくてすむのなら呼吸器が必要な場所には行きたくないんですが、誰かが行かなければ
ならないのなら、出来るだけ安全にということになります。
私ですか。呼吸器を設置してある隧道の作業で、立坑から数kmの距離を行ったことがあります。”なんかあっ
たときには”ということで、呼吸器の場所だけチェックしてあとは忘れて作業します。呼吸器があれば火(爆
発)や水が出ない限り逃げられます。
そのためにもしっかりした整備と設置を。

カーライムの綴りは「KALIME」です。消石灰(水酸化カルシウム)が「slaked lime」なので、その辺りから来たの
かなと。

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