酸素18%以下の不足は、死亡の可能性も?!酸欠の基礎知識をまとめてみた。

ガスってなんがす?
いや、なんすか?
いや、なんです?

三省堂のコンサイス英和辞典の1970年版には

「gas=ガス、気体」

とあります。

じゃ、気体ってなんぞや?
気体とは物質の三相(固体、液体、気体)の一つで、一定の形や体積を持たず、圧力の増減で体積が容易に変化(特に体積が増える方向には無限)し、形を持たずに流動する状態のことです。
イメージから言えば、身の回りにある空気そのものです。
あるいは排気ガスや毒ガス、屁やげっぷ、風船の中身、その他その他。

これらのガスの増減は生物(特に人間)の生死に大きく関わる事なので、”安全”のために現在の気体の状態と増減の傾向をつかんでおくことは非常に重要なことです。
ということでガスの計測は計測業務の中でも特に重要なものの一つです。
広義のガス計測であれば空気というガスの風向・風速・圧力とその変化なども含まれそうですが、それは天気予報に任せて、と。
※気象観測というカテゴリーの機材を使用します。

ガス計測の目的としては次のようなものがあります。

①酸素の計測
酸素がなければ人間他大多数の生物は生存できません。
そのため酸素濃度を計測し、その現状や変化の傾向を捉えることは非常に重要です。

②可燃性ガスの計測
メタンや水素などのように濃度が増えると燃焼・爆発を起こすようなガスは非常に危険です。
このようなガスの濃度が高くなっていないかどうかは重要です。

③毒性ガスの計測
一酸化炭素や硫化水素などのように一定の量を超えると人体に有害な影響を及ぼすガスは危険です。
これらの影響を受けないように、濃度を監視することは必須です。

④蒸気などの計測
物質を侵したり人体に影響を及ぼす蒸気など固体・液体から自然蒸発のような形で出るガス状物質は危険な場合が数多くあります。
シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドなどが該当します。

⑤ガスそのものではない微粒子の計測
ガスではなくても非常に小さな固体や液体の粒が空中に浮遊している場合があります。
これらが有害物質であったなら・・・・
身近では車屋工場の排気ガス、煙草の煙などPM5とかPM10とかいう粒子が該当します。

 

酸素の計測

空気の組成の21%程度が酸素(O2)です。
これが18%以下になると、人体にいろいろな影響が出てきます。
概ね、頭痛や吐き気、めまい、筋力低下などの症状と呼吸や脈拍の増加に始まって、嘔吐、意識不明、昏睡からけいれんを起こしたり呼吸停止で死亡に至るようです。
非常に危険なので、酸素が欠乏するような環境での作業を行わなければならないときには酸素欠乏作業主任者の資格(俗に”酸欠”の資格と言います)を持った人間が安全管理を行うことになっています。
酸素欠乏が起きる環境は、換気が良くないところで酸素を消費する条件があるところ(微生物、錆や燃焼など)、または換気される以上に酸素を含まないガスの流入がある場合にほぼ限られます。
例として良くあげられるのが以下のようなところです。

酸素欠乏が起きる場所の例

・貨物船の船倉や洞窟:
換気が少なく、長期間の航海によって様々な原因(運搬した物質(ガスが出る・酸素を消費する)、微生物、錆、その他)によって酸素濃度が下がることが多い。

・発酵タンク:
発酵には微生物が必要であるが、それらが酸素を消費するとタンク内部が酸欠状態になる。

・地下の作業現場、洞窟:
換気が少なく、有害ガス(メタンや硫化水素など)の類が噴出する可能性が高い。

・地下室や密室、洞窟:
人間が酸素を消費することで酸欠になる。また、燃焼による暖房を用いたり作業を行うことでも酸欠になる。

・盆地や窪地:
屋外でも硫化水素等が噴出しやすい場所(火山の近くなど)にある窪地などでは流れ込んだ酸欠空気が滞留する場合があるので危険。

・その他:
火事の際に煙が充満しているところを通るときには姿勢を低くしておかないと酸欠に陥るとか、このあとにも出てくる酸欠の空気が吹き出しているところなどで思い切
り吸い込むと気を失ってしまうとか、予想外の条件もある。

 

酸欠の危険度

よくドラマやアニメなどで酸素が欠乏する状態に置かれた主人公が、超人的な意志や体力、運等によって窮地を切り抜ける場面がありますが、ほぼ全部嘘です。
と思ってたら意外なところでびっくりがありました。
ワンピースです。
荒唐無稽ばっかりと思ってたんですが、シーザークラウンとルフィの一騎打ちの場面で、CCがルフィの周辺の酸素を0にしてルフィが失神する場面がありました。
素人考えだと

「息止めればすむじゃない」

ってとこですが、実は酸欠の空気を吸い込んでしまうと脳が危険信号を出して働きを止めてしまうんですね。
で、失神。
だからこの部分の描写は正しいんです。
しかもこのあとは酸素が無くなるより早く息を止めることで失神を回避するという、文句の付けようがない筋立てでした。
作者は多分勉強したんでしょう。
でも残念ながらこのあとの硫化水素については

“?”

でしたが。

今述べた、酸欠の空気を吸い込むと失神するという話は、酸欠資格の取得の際に必ず出る話です。
酸欠事故の死者のかなりの割合が、

“酸欠空気を吸い込んで失神→タンクの底などに落ち込む→救助できなくてそのまま死亡”

というパターンだそうです。
その場に倒れるくらいだったら助けて貰える可能性もあるんでしょうけど、ということでタンクを覗き込んで息を吸うのは厳禁です。

火事の時、空気中の酸素は燃焼に使われて減ります。
全体としては火事の外にある空気から次々に酸素が供給されるので、燃えるものがある限りいつまでも火が消えないのですが、局所的には酸欠になる場合があります。
さらに、火事を消すための手段として燃えるものと酸素を遮断する事があります。
身近なのは消火器の泡ですね。
ところがもっと強烈な手段として、窒素などの不燃(難燃)性気体を大量に吹き付けるというのがあります。
屋外では難しいのですが、駐車場などのクローズした場所で人が居ない様な所では窒素を充満させて消火するシステムが結構たくさんあります。
酸欠になります。
もっと遮断したいときには、何か(ダイナマイトとか)を爆発させます。
これで周辺の空気を吹っ飛ばして火を消すという何とも乱暴な方法ですが、こうなると酸欠が云々言ってるより先にバラバラにされて終わります。

それはさておき、酸欠の被害に遭わないようにするためには、酸欠が起きる場所とそのパターンを理解し、怪しいところでは必ず酸素濃度計で計測してからでないと入らない様にすることです。
そうそう、スリーパーホールドで”落ちる”のは酸素濃度計があっても防ぐことは出来ません。
吸い込んだ酸素が脳まで届かないだけなので。

 

酸素の濃度計測方法

酸素の濃度を計測する方法はいくつかあります。
細かい話は抜きにして、一番普及している計測方法がガルバニ電池を用いるものです。
ガルバニ電池は空気中の酸素によって内部で発電作用が起き、その電流量は酸素の濃度に比例するという特性があるので、この電流の量で酸素濃度の計測が出来るというものです。
長所は、比較的安価なことと電源投入後(常温で)速やかに計測出来ることなど。
短所は、電池が消耗するので定期的に交換が必要なことと気圧の変化によって影響を受けること、清浄空気中でのキャリブレーション(自動)が必要なことです。

高温の排気ガスなどに含まれる酸素濃度の計測にはジルコニア方式が用いられます。
※酸化ジルコニウム(ZrO2)に安定剤(酸化イットリアや酸化マグネシウム)を添加したものジルコニアを高温(700℃以上)にしたときに、その両側に酸素濃度差が存在すると、濃度の濃い方で酸素がイオン化し、薄い方でイオン化した酸素が元に戻るという反応が起きます。
濃い方から薄い方へ電気が流れるため、これを計測することで酸素濃度がわかるという理屈です。
長所は、センサー寿命が比較的長いこと、反応が早いこと、キャリブレーションが不要なことなどです。
短所は、センサーを高温にしておかなければならない(計測開始に時間がかかるなど)、比較的高価、可燃性ガスの影響を受ける、防爆地域では使用できないか特殊仕様にする必要があることなどです。

 

もちろん、事前準備も

ところで酸欠の計測時に、「人が酸素濃度計をもって危険地域に入っていく」っておかしいと思いません?

だって、酸欠のところに行って”酸欠だ”ってわかったときにはもう遅いでしょ。濃度計の指示を見る前に倒れるぞ~。
ということで、例えばマンホールに入る前には、

①センサー部が延びる濃度計を持ってきてセンサー部だけ先にしたまで垂らして計測します。
機材に依りますが5~10m可能です。

②ポンプなどで空気を吸い込んで計測する機材であれば、吸い込み口を中に垂らして計測します。
吸い込みきるまでに30秒ほどかかりますが、ものによっては20m以上深いところを測れるものもあります。

③そんな都合のよい計測器がない場合は、計測値のホールド(最大(最小)値保持)をしてお
いてから紐か何かでぶら下げます。測りたいところまで下げておいてしばらく静止させ
てから引き上げるとその地点の濃度が表示されているはずです。
等の対策を行ってください。
また、このような場合には合わせて可燃性ガスや毒性ガスの有無も計測しておけば、更に安全です。

温泉に入るときには温度を手で見てから入りますよね?
あれです。
誰か入ってれば安全だし、倒れてれば危ないし。(助けろよ!)

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