赤外線サーモグラフィーの原理について徹底解説してみた。

サーモグラフィです。

「サーモ(thermo)」とは、”熱”を表す結合辞、と英語の辞書に書いてあります。
同じく「グラフィ(graphy)」とは”図化、書法”を表す結合辞です。
合わせると「熱の図化」、要するに熱の量や変化、分布などを画やグラフにする(または記録する)という意味になりますね。
なんだ、自記式の温度計のことか。
そのとおり、Thermographを辞書で引くと自記温度計・温度記録計って。
普通の温度計はサーモメーター(Thermometer)って言います。体温計も一緒(ClinicalThermometerとも言うらしいです)です。

ところがサーモグラフィはThermographyという綴りなので、最後に”y”が増えます(語尾の”y”は”○○すること”という意味になるそうです)。これは元々医療用のものを指していたようです(これも辞書に載ってます)。確かに体のどこが熱持ってるかっていうのは、診断に影響しますね。
同じように一様に熱した対象物の温度が場所によって違っていたり、熱源の影響が場所によって違ったり、はたまた場所毎の温度変化の速さなどを計測出来れば、すなわち製品の製造ムラ、製造設備点検、非破壊検査、などに役立ちます。

さて、サーモグラフィは”熱”を計測するものだということがわかりました。
じゃ、熱って何でしょう。

熱とは

国語辞典を引くと、
熱:熱いこと、熱さ、温度が高い、温度を高める力、高い気温、・・・
と出てきます。

物理屋の答だと、
熱:温度の異なる物体間のエネルギーの流れ
となります。なんのこっちゃ。

つまり、温度が高いだけでは”熱”って言わないの、高いとこから低いとこへ流れて初めて”熱”だよ、ってことですね。
うーん。
「熱が出た」は間違いで「体温が上昇した」が正しいみたい。熱出そう・・・

温度計(Thermometer)も直訳したら”熱計”なので、英語圏でも国語辞書に近い感覚の人が多いんでしょうね。

さて、なんで延々と熱の定義の話をしたかというと、熱は温度が高いだけでは発生しないということ。温度の高い方から温度の低い方に”流れ”ることで初めて”熱”として扱われます。

熱の伝わり方

熱の流れは伝導、対流、輻射という3つのルートで伝わっていきます。
伝導は触ると熱い、対流は熱いものが上に来る、輻射は離れてても熱い。
サーモグラフィはこのうちの輻射熱の計測を行います。

輻射熱の実感としては反射式ストーブ、たき火、日光などが身近ですね。いずれも体温よりも高い熱源によるものです。
じゃ体温よりも低い場合には輻射熱は出ないのでしょうか?
プレデターって映画にあった様に人の発する熱は感知することが出来るので、体温程度でも輻射熱は出てるようです。
では、どのくらい低い温度まで輻射熱を発しているのでしょうか。
じつは-273.15℃(絶対零度)にならない限り分子運動が止まらないので、熱が出ます。絶対零度になったら分子の運動が0になるので熱は出ません。
つまり、物体は分子運動のエネルギーを外向きに熱として放射しながら絶対零度まで温度が下がって行くもの、なんです。

ほっとけば絶対零度になるって、実際にはなってないですよね。南極で外に物置いててもせいぜい-60℃くらいです。
これ、実は太陽からの輻射熱で地球全体が暖められているからで、太陽から遠い土星辺りでは-180℃位なのでメタンの雨が降るといいます。もっと離れるともっと下がります。
※厳密に言うと絶対零度でも分子運動は完全には停止しないそうです。

要するに絶対零度以外のあらゆる物質からは、多かれ少なかれ輻射熱が出ているということですね。
この熱(エネルギーです)はどのような形をしているのでしょうか。あんまり熱いと痛いので小さな槍が飛んでくるとか、そんな事はありません。みんなよく知ってる電磁波の種類である赤外線として飛んできます。

出ました、赤外線です。
こたつが温かったり、焼き芋を焼いたり。赤外線があると温かい(熱い)んだ。と思っているあなた、実はちょっと違うんですね。今述べた様に、たとえ氷点下100度の氷でも赤外線は出てるんです。ただその量が少ないだけで。
反対に人間の体温で発する赤外線の方が強いので、差し引き寒いことになるし、零下100度の氷の方は人間からの赤外線で少しはほっこりすることになります。
でも相手が100℃だとすると、そちらの赤外線の方が強くなるので、人間の方がほっこり(というか火傷)するということに・・・

まとめると、
・絶対零度以外のあらゆる物質からは赤外線が出ている。
・その量は温度が高いほど多い
・温度の違う物体が2つあると、双方の赤外線の量の差し引きで熱のやりとりが起こり、双方の温度が近くなる。
・放射されるエネルギーの方が受け取られるエネルギーよりも大きい。
→放射した全部のエネルギーが相手に届くわけではなく、途中で損失があるため。

黒体

ここまで来ると赤外線の量を計測したら輻射熱の計測が出来るので、その元の物体の温度が求められそうですね。
サーモグラフィは近いぞ。

実は
「黒体から放射される全エネルギー量はその黒体の絶対温度の4乗に比例する」
W=σT4
:W 単位面積あたりの全輻射エネルギー(W・cm-2)
:σ シュテファン-ボルツマン定数(5.67×1012 W・cm-2・K-4)
:T 黒体の絶対温度(゚K)
という
「シュテファン・ボルツマンの法則」(Stefan-Boltzmann Law)
が存在します。

※ヨーゼフ・シュテファン Josef Stefan 1835/3/24~1893/1/7
当時のオーストリア帝国領(現在のクラーゲンフルトKlagenfurt)で生まれたスロヴェニア人の科学者。
1879年にこの法則を見出した。

※ルードヴィヒ・ボルツマン Ludwig Boltzmann 1844/2/20~1906/9/5
オーストリア帝国のウィーンWienで生まれたオーストリア人の科学者。
Josef Stefanの弟子で、1884年にこの法則を理論的に証明した。

ところで”黒体”っていったい何なんだ?
いきなり出てきたよくわからん用語ですが、これは
「全ての光を吸収する物体」
と定義された、理論上の物体です。
要するに、”理想気体”や”剛体”、”質量0の○○”といったものと同じで、理論を組み立てる場合の簡略化のための仮定です。実存の物体とは異なりますが、実験結果などで何らかの関係性をもたせることで実際の計測に利用出来るというわけです。
この関係性が「放射率ε(イプシロン)」で、理論上の黒体(完全黒体)ではこれが”1”になります。全波長のエネルギーを吸収します。
なお、放射の場合は全波長ではなく、黒体の温度に対応した波長で放射します。
逆に全く吸収せず全部反射してしまう様な仮定の物体(“鏡面体”といいます)の放射率は”0”になります。
放射率εはこの0~1間の数値を取ります。

ということで、この法則が意味するところは
「どんな物体でもその絶対温度(゚K)の4乗に比例するエネルギーを放射している」
ということです。

放射する単位面積あたりのエネルギーを計測してやれば物体の温度がわかる。
エネルギーは赤外線で飛んでくる。
赤外線を測れば物体の温度が”触らずに”わかる。

これが赤外線サーモグラフィの原理です。解決しました。
え?してない?

疑問1:太陽からは赤外線以外の可視光線なども飛んできてるんですが、これは放射エネルギーには入らないの?
疑問2:赤外線を測るってどうやるの?
疑問3:放射率はどう影響するの?

そうですね、では説明。

放射されるエネルギーは?

疑問1:
太陽からは赤外線以外の可視光線なども飛んできてるんですが、これは放射エネルギーには入らないの?

回答1:
「シュテファン・ボルツマンの法則」では、黒体の温度と放出される全エネルギーの関係が明らかになりました。
この放出されるエネルギーは赤外線に限りません。でも、元のエネルギーが少ない(温度が低い)と赤外線しか出ません。エネルギーが多くなるにつれて赤外線だけではなく他の波長の電磁波も出てくることになります。
イメージとしては山が高くなると裾野が広がっていくイメージです。
ただちょっと癖があって、波長の短い方へ頂上が移っていくようになります。

この状況を表すのが「ウィーンの変位則」や「プランクの放射則」(Planck’s law)です。

「ウィーンの変位則」(Wien’s displacement law)
とは、
「黒体からの輻射のピーク(一番強い)波長が黒体の温度に反比例する」という法則です。
λmax=b/T
:λmax ピークの波長
:b 比例定数(b= 2.8977729×10-3 K・m)
:T 黒体の絶対温度

「プランクの放射則」(Planck’s law)
とは、
「黒体からの輻射量が黒体の温度と輻射の波長の関係によって決まる」という法則です。
I(ν,T)=(2hν3/c2)・(1/e(hν/kT)-1)
:I(ν,T) 分光放射輝度
:ν 周波数
:T 黒体の絶対温度
:h プランク定数
:k ボルツマン定数
:c 光速度

※ウィルヘルム・ウィーン Wilhelm Wien 1864/1/13~1928/8/30
ドイツの物理学者。1893年にこの法則を推測。ノーベル物理学賞(1911年)。

※マックス・プランク Max Planck 1858/4/23~1947/10/4
ドイツの物理学者で「量子論の父」と呼ばれる。1900年にこの法則を発表。この法則内に含まれる定数h
(プランク定数 h=6.626069×10-34)が物理学の基礎定数の一つ。ノーベル物理学賞(1918年)

ウィーンの変位則によると、黒体の温度が上がれば輻射する電磁波(最初は赤外線)の波長が短くなって行き、概ね700℃位からは可視光も含まれて人の目にも見える様になってきます。どんどん温度があがって6000℃位になると可視光全体がピークになります。実はこれ太陽の温度で、太陽光線が白色に見える(様に人間が進化した)のはこのせいです。
話は外れますが、恒星の色はこの法則に従っていて温度の低い恒星は赤っぽく、高くなって行くにつれて黄色~白~青と変化していきます。これも一種の放射温度計ですね。

プランクの放射則によると、電磁波のピークは波長の短い方にシフトしながらピーク値そのものが大きくなっていきます。つまり輻射のエネルギーが大きくなって行っているわけです。ということは当然ですが温度の高いものの方が放射している電磁波が強いということで、それはすなわち受ける側にとって”熱い”ということです。
たき火や反射型ストーブが温かい(熱い)わけはこれでした。

ということで答は「温度が高くなれば赤外線だけではなく可視光も放射エネルギーとして出る様になり、その温度は概ね6000℃以上」です。でもそんな温度でそばにいたら温かいどころではないですね、太陽が遠くでよかった。

測り方

疑問2:
赤外線を測るってどうやるの?

回答2:
普通に考えると飛んでくる電磁波の強度を調べればいいと思いつきます。
細かい説明は難しいので省きますが、熱型と量子型の2方法があり、熱型は電磁波(赤外線)のエネルギーを熱に変えて計測するもので、量子型は電磁波が分子原子に当たるとそこから電子等が飛び出してくる現象を利用して計測するものです。
一般的に量子型の方が応答速度が速く感度もいいそうですが、検出部の素材によって感度の良い波長が決まってくることと、検出部の冷却が必要なので大型化してしまうなどの欠点があります。
ということで、一般的には熱型(応答速度が遅く感度も今一であるが、小型化が楽で常温での使用も可能)が多く用いられます。

その熱型のセンサーにはサーモパイル素子が最も多く用いられているようです。
おっと、サーモパイルって何?

サーモパイルの正体は熱電対です。熱電対1個だと起電力が小さいので、直列にたくさん(100個とか)繋げて微小な温度変化を検出できるようにしたものをサーモパイル(Thermopile:熱電堆、熱電対列)といいます。
これを温度測りたい(電磁波が出ている)方に向けるんですが、このままだと太陽光などで誤差が出るので赤外線(だけ通す)フィルターが付けてあります。前の方に書きましたが、概ね6000℃位にならないと可視光線は出てこないので、通常は赤外線が取れればOK。
サーモパイルの前面は真っ黒に塗っておいて、熱の吸収をよくしておいて。
でもサーモパイルの温度がそのまま熱源の温度ではないです。その温度変化によって赤外線量を計測し、放射熱源の温度を算出することで初めて対象の温度がわかるという仕組みです。

放射率など

疑問3:
放射率はどう影響するの?

回答3:
例えばサーモパイルの前面を黒く塗るんですが、これが完全黒体に出来るかといえばそうではないので、ここで吸収出来る熱量はεの数値分少ないことになります。
これは熱源にも言えることで、例えば何かの物体の表面温度を計測しようとしてサーモグラフィをそちらに向けたとしても、

・物体(放射側)は完全黒体ではないので、ε分だけ小さい放射しか出ない
・センサー(吸収)側が完全黒体ではないので、吸収熱もε分だけ減る

ということなので、正確な値を求める場合にはεが必要になってきます。
調べてみると、
磨いた金属は少数の例外を除いて概ね0.1程度以下
煉瓦、石膏、コンクリートなどが概ね0.85~0.95
というふうになっており、対象物によっては凄い差になります。
※これらの数値は対象物の温度、赤外線の波長、表面状態によってかなり変わるということなので、あくまでも”このぐらい”という参考です。

実は世の中には「黒体テープ」なるテープが存在します。
ものによって放射率が0.94だったり0.95だったりしますが、これを計測したいものの表面に貼ってから放射率をあわせた放射温度計で測ると正確な値が出るという代物です。
テープ剥がして同じ温度が出る様に設定放射率を調整すれば物体の放射率が求められるというわけで・・・

ところで人間の体温(これが目的で放射温度計を導入される場合も多いようです)を計測するときにはどうなるでしょうか。
一人一人を裸に剥くわけにはいかないので、予め露出している場所(普通は額)の温度を計測することになります。
ところが、

①皮膚の温度は体温より低く、気温にも影響される。
②空気や空中の水分などで届く電磁波(赤外線)の量が変化する。
③体温計として使用する場合には、医療機器としての認証が必要。

③は本気の体温測定では必要ですが、たくさん人が居て一度に見るなんてのには向かないですね。医療目的で使うと法律違反になります。ただ①の”皮膚の温度は体温より低い”ことに対しては、体温計の各メーカーのノウハウで「額温度→舌の下温度や、額温度→腋の下温度、ものによっては額温度→直腸温度(お尻の穴の中の温度)」に変換しているのでかなり正確に出るようです。
※ちなみに直腸温度>舌の下温度>腋の下温度だそうです。
さらに同時計測した気温を換算に使用することで①の問題を回避し、計測距離を近づける(額から1~3cm程度)ことで②の影響を極力排除する様に考えられています。

そうそう、放射率εでしたね。人間の皮膚の放射率は色々調べると常温でε=0.98~0.99位になってます。概ね0.98の方が多いのですが、状況によってはε=1.0という乱暴な計算をしているものも・・・・
ということで体温計測の際には直前の①~③に比べると放射率εの影響は少ないようです。

でも黒体テープよりも人間の皮膚の放射率εの方が大きいってことは、皮膚の方が”黒い”わけで。

使用上の注意

さて、一応サーモグラフィの理屈のようなものを説明させて貰いましたが、使用の際には気をつけていただかないとまずいことがいくつかあります。

まず、計測値が気温や空中の水分などで影響されること
→雨降りの時や対象物と計測機の周辺の気温が違うときには注意しなければなりません。

次に、赤外線を計測しているため、ガラスの影響をもろに受けること。
→普通にはガラスの放射率は0.8~0.9位なので、全然透明じゃないし。
いや、透明で光が見えるよっていってもそれは可視光で、ガラスは可視光はよく通すけど赤外線(波長が2μm
位よりも長いの)は吸収されます。吸収されるから放射率が大きいのです。

続いて、測定対象から離れると誤差が大きくなります。
→赤外線が通ってくる道筋での妨害(風、水蒸気、気温変化など)に加えて、到達エネルギーが小さすぎたり、他の熱源も計測するなど、精度の良い計測が難しくなります。出来るだけ近くに。

そして、見えなくても検出するものがあります。
→湯気、蒸気、陽炎などは透明に見えても赤外線を出しています。これは意外と気がつかないことが多いので注意してください。
うまく使えば非常に便利な機械なので、皆さんも一家に一台。どうですか?

※輻射は輻の文字が当用漢字にないので、最近は”放射”と書いてあることも多いようです。

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今でも通用する高精度ティルティングレベル”名機N3”はこんな器械だ

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N3

N3です。名機です。
現在のライカジオシステムズ(ライカ)の測量機のブランドがまだ「ウィルド(WILD)」だった頃、民生用世界最高レベルの精度を誇ったティルティングレベルです。

※レベル:Level
ティルティング:tilting(以前はチルチン(グ)とも読まれていた)

以前紹介したセオドライトのT3000と並び称される名機ですが、こちらの方はずっと汎用性の高い、エクセントリックではない名機と言えます。
一番大きな違いは、N3が測量機として国土地理院に登録されていて(一級レベル登録)公共測量(一級水準測量)に使用できるというところでしょう。
(一級レベル:登録番号1 登録年月日1975/1/10)

 

精度を表す1km往復標準偏差が±0.2mm

どういうことかというと、ある点の高さを0として、1km離れた点の高さを求める為に水準測量を行います。(水準測量がわからない人は調べてね)
で、1km離れた点と最初の点の高さの差が求められます。
続いて今度は逆に水準測量をしながら戻ります。最終的に元の点まで戻ったときに高さが0に なっていれば誤差無しなんですが、N3ではそれが±0.2mmに収まるという話です。
一級水準測量ではレベルと標尺の間隔が30m以内という規定があるので、1km先まで行こうとするとレベルの据付が最低で17回、データを読み取る回数が34回、往復なので倍にして34回と68 回。
これだけの作業を行って0.2mm以内に収まるって・・・化けもんですね~

ちなみにこのN3の望遠鏡もT3000と同じくパンフォーカル式になっているので、近いところも遠いところも楽に視準出来ます。
パンフォーカルではない望遠鏡のレベルではどうしてるかって?
通常は倍率の大きいものを屋外用、大きくないものを屋内または近距離用として使い分けているそうです。

もうひとつ。
今現場で使用されているレベルはほぼ”オートレベル”ですが、N3は水平を手動で合わせるティルティングレベルです。専用ののぞき窓から1/4だけ見えてる2つの気泡管の高さを合わせれば望遠鏡が水平になっているわけなんですが、感度がいいので結構難しいです。
セオドライトの棒状気泡管の両端を”厳密に”合わせるわけですね。
ここをちゃんと調整しておかないと、前記の「1km往復標準偏差が±0.2mm」は絶対出ません。

 

具体的な計測方法

①高さの基準または計測の出発点に標尺を立てます。
(厳密な測量では標尺はインバー鋼などで出来た3m一本ものの”一級水準標尺”を用います)
②標尺から到達点の方向で30m以内の場所に三脚を立ててレベルを据え付けます。
(厳密な測量では木製の直脚(水準測量用の伸縮しない木脚)を用います)
③レベルの望遠鏡を覗き、(望遠鏡内の)水平視準線と重なる位置の標尺の数値を読みます。
(標尺の目盛とずれている場合は、マイクロメーターを使用して厳密に合わせます)
④読み取った数値を記録し、標尺を反対側の等距離の辺りに据え付けます。
(厳密な測量では標尺台を用いて、標尺の向きを変えるときに高さが変わらないようにします)
⑤前々項③と同じように、移動した標尺の数値を読み取ります。
(前の点と後の点で1セットです。先に測る方の点を後視点、新点の方を前視点といいます)
⑥前々項④の注釈にある標尺台を利用して標尺の向きを変え、②から繰り返します。
(厳密な測量では直射日光による影響を避けるために、N3に日傘を掛けます)
⑦参考:暗くて標尺の数値が読みにくい時は照明を付けます。

 

N3は測量以外の精密計測でも活躍

T3000と同じような精密計測です。といっても角度や距離が測れるわけではないので、もっぱら高低差を計測することになります。
え?
測量と変わらん?
いや、測量で必要とされる精度とはまた違うので・・・

では実際に用いられた状況を紹介いたしましょう。

その①:精密機械工場の床

某コンピュータメーカーの工場の建設の際の話です。組み立て室(だったかな)の床が傾いているとまずいということで、N3の出番がありました。室内での計測なので、一級水準測量用の3mのインバー標尺は使用出来ません。
で、こういう時のために用意してある1m以下のインバー標尺(長さは数種類あります)とセットでの出荷となりました。
このような短いインバー標尺も”工業計測用”のツールとしてちゃんとメーカーの商品ラインアップに載っています。さすがに短すぎて国土地理院への測量用機材としての登録/認定はありませんが。
なお、先ほど挙げた「インバー製3mの一級水準標尺」はちゃんと検定を取っております。

その②:長大橋の主塔

本四連絡橋を造っていた時代のことです。橋の根元にある背の高い構造物、主塔。
大型の橋なので、主塔の高さは200~300m。これ一本ものでは作れないし運べないので、高さ10m位のブロックを作り、現場で20~30個固定しながら積み上げて作ります。
この積み上げ作業の許容範囲(傾きや位置)は1mm!
ブロックを20個として2cm。200m上で2cmは1/10000になります。
主塔(というか橋梁)の施工目標精度は1/5000なので、各部の施工精度は1/10000~1/15000でやっていると聞いていました。
ここまでの話ではN3の活躍する気配は全くありませんね。話はここからです。
1mmの精度で10m角のブロックを積み上げていくってのはとんでもないことですが、そのブロックが組み立て時点で1mm狂っていたら?
話になりませんね。
じゃいったいあのブロックはどれくらいの誤差範囲で作成されているのでしょうか。

答:1/100mm

びっくりです。T3000を用いた三次元計測での精度が20~30μmなのに、こっちは1/100mm=10μmだと!
どうしましょう。
橋梁用のブロックで一番精度を要求されるのは高さです。現場で修正のしようがないからですが、ブロックのこっちの端とあっちの端(または任意の場所)で高さの差1/100mm以内になる様に加工するためにその検査機械が要ります。
そこでN3です。N3は高さ方向に関してはマイクロメーターを使って1/100mmまで読めます。
工場でブロックを作ります。N3を使って1/100mm以下で水平であることがわかっている床にブロックを置きます。ブロックの上端の各点をN3で計測して製作精度内であることを確認します。そうでなかったら再度加工。

凄いですよね。
主に作成してたのは神戸にある重厚長大な会社だったのですが、もっと凄いのはそれ使って計測してた技術者。
「俺はN3で1/1000mm読んでた」
って豪語する人が居ました。アナログの計測機なので、”メモリの間”を読む(推読といいます) ことで1/1000mmまで読んだ(つまり精度はちょっと怪しい)ということなんだそうですが、これやってみたけどガッチャガッチャマンには見えるけど読めませんでした。
余談ですが、後継(?)となるデジタルレベルNA3003は最小表示がデジタル0.01mmなので推読が出来ないため、先ほどの技術者によると「ありゃあダメだ、使えん」だそうです。

オプション

N3にはT3000ほどのオプションはありません。周辺機材でインバー標尺(測量用と工業用)、標尺台、直脚、日傘(!)。
本体直付けのオプションは接眼レンズ周辺のものです。

交換用接眼レンズFOKシリーズ

望遠鏡の倍率を変えるための接眼レンズ。パンフォーカルでも合わせにくい近距離や長距 離の視準の場合に標準のものと付け替えて使用します。

ダイアゴナルアイピース

望遠鏡を覗いて視準する際に、障害物があったり足場がなかったりという特殊な状況下で 使用されます。本体のアイピース(接眼レンズ)と付け替えて横や上から視準することが出来ます。
ダイアゴナル(斜め)ではなく視準方向と直角の方向から覗き込むのにダイアゴナルアイピースとは?
→横や上だけではなく斜め方向からも視準出来るという意味だそうです。

レーザーアイピースDL2

本体アイピースとの交換で取り付ける事が出来ます。これを付けると視準先に赤いマーキングが出来るので、どこを視準しているかがすぐにわかります。

このN3、触り心地も最高です。

といっても変態的な意味で言っているのではなく、T3000等と同じく”可動部分を動かしたときの動きが非常にスムーズ”なんですね。
通常、可動部分のガタを無くそうとすると動きがシブくなります。軽く動かそうとするとガタが増えます。いい機械は工作精度がよい(例えば回転部分が真円に非常に近かったり、軸が円の中心にぴったり合っているなど)ので、その間のどこかに”スムーズに回ってガタがないところ”があるはずです。
電気的な補正などが無い時代の計測機は、どんなものでもそれ自体の製作精度がそのまま計測精度みたいなもんですから、どんどん精度を上げていったわけです。
限界も当然あるんですが、その結果がN3T3000などに表れていると思います。
これ以降の計測機は電気的な補正や計算によって精度を確保しているものが多く、このアナログ最後の時代の計測機(他にもありますが)を評価する人はたくさん居ます。
何でもちょっと古い目がいいんじゃないかと思う、ちょっと古い目のガッチャガッチャマンでした。

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1mol(モル)単位を徹底的に分かり易く解説してみた。

モルという単位があります。SIでの基本単位の一つです。
元々はドイツ語でMolなんですが、SIではmolになります。英語の綴りではmoleで、モグラとかスパイとか色々な意味がついてくることから、アイザック・アシモフというSF作家がこれをネタに何か書いてました。
ハカレンジャーでもISO爺マンさんがネタにしてましたが、結論が

「私は光量子計には近付かないようにします。」

ってなんのこっちゃわからないオチだったので、ガッチャガッチャマンがサンダーバードよろしくヘルプに飛んでまいりました。
ちなみにISO爺マンさんの時代だとマグマ大使に出てくるモルですね。
英語版での説明文がまんま”mol”です。

ではまずmolの定義です。
「0.012キログラム(kg)の炭素12の中に存在する原子の数に等しい要素粒子を含む系の物質量」

高校の物理化学をサボってた人(俺は文系だ!って?)が、この文章見て「ああそういうことか」って納得したら、そ
れはそれで(違う意味ですが)怖いです。

ではまず文章をバラバラにしてみます。
・0.012kgの炭素12
・原子の数
・それに等しい要素粒子を含む系の物質量

余計わからん?
いやいや
では説明です。

 

0.012kgの炭素12

まず炭素です。
これは原子番号6番の元素で、記号は”C”です。
この”C”はみんな知ってるカーボン(carbon)の略です。
なんちって。
carbonは英語で、元素の名前の元はラテン語なので本当はcarboniumです。
日本語では”炭”、だから炭素。
原子1個で分子でもあります。(これを単原子分子と言います)

元素の中には複数の原子で分子を構成するものもあります。有名な酸素とか水素とかは、分子になると2個ずつのペア
になるので、酸素原子はO、酸素分子はO2、水素原子はH、水素分子はH2、というように書きます。
炭素は区別無く単に”炭素”または”C”って書かれます。

続いて炭素12です。
炭素は原子番号6なので、イメージとしては原子核内に陽子が6個あり、その回りを電子が6個回ってます。
陽子は”ようし”です。”ようこ”さんではありません。でも逆に電子を”でんこ”と読んで擬人化する輩も・・・

で、次の”12″は原子量です。

たとえば水素原子は普通の場合、陽子と電子が1個ずつで原子番号1、原子量1となります。陽子は正電荷(+の電気)を、電子は負電荷(-の電気)を持っているので±0で釣り合ってます。
もし陽子が2個だったら電子も2個ないとバランスが崩れます。
じゃ原子番号2のヘリウムは陽子2個の周りを電子2個が回ってるの?
となりますが、色々あって陽子2個と中性子2個の合わせて4個の回りを2個の電子が回っています。
この中性子というのが電荷を持たず、原子量だけ増やしてます。ヘリウムの原子量は4です。

ところで周期表があれば水素のところを見て下さい。
原子量がちゃんと1になっていません。
え?今調べたら1.00794って。
ガッチャガッチャマンが習ったときには1.00797だったのに。
良かった、酸素は15.9994だった。

話は戻って、水素の原子量が1でないっていったいどういうことかというと、殆どの水素は陽子電子ともに1個ずつとい
う普通の水素なんですが、中に変わったのが居て陽子電子中性子ともに1個ずつになってるんです。
これを重水素といい、英語ではdeuterium(デューテリウム)とも言います。
これ原子量は2です。
更に変わったのには陽子電子が1個ずつなのに中性子が2個という三重水素(英語ではtritiumトリチウム)なんてのまであります。
原子量は当然3です。
一番多いのは普通の水素原子ですが、重水素と三重水素も自然界にわずかながら存在してます。
これらを総称して同位体(isotopeアイソトープ)と言います。
電気的な特性が全く一緒なので、化合物も同じものを作ります。
でも重いです。
この水素とその同位体を自然界に存在する量で平均したら1.00794になったので、これが水素の原子量になるわけです。

これらを
水素1 元素記号H
水素2 元素記号D (デューテリウム)
水素3 元素記号T (トリチウム)
と書く場合もあります。
水素2の水はH2OではなくD2Oって変。
一個だけだったらHDO???

話は大きく戻って炭素です。
炭素12は今までの話から陽子、電子、中性子が全部6個ずつの炭素原子だって事がわかっていただけたと思います。
でも変わり者はどこにも居るわけで、炭素の中にも中性子の数が7個のと8個のがちょっとずつ居ます。
で、平均すると12.0107位になります。
そうそう、この原子量の数値は全て誤差の範囲でこれくらいというものです。
物理量はこんなのが多いんです。
で、ちゃんとした(?)計算に用いる場合には原子量まで指定して”炭素12″とか書くわけです。

 

原子の数

ちなみに原子量を数えるときには陽子数+中性子数で、電子数は含みません。
理由は陽子や中性子に比べて電子が非常に軽いこと(1800分の1より小さい)と陽子と中性子の質量差は電子くらいしかないことがその理由です。
ちなみに電子+陽子=中性子という話もあります。

この原子量、人間の感覚ではよくわからないので、単位を付けて12g(0.012kg)にしたらわかりやすいですよね。
じゃ12gにしましょう。
ところで炭素原子をいくつ集めたら12gになるんでしょうか。

答は6.022×10^23個(6.022掛ける10の23乗個)です。
炭素12をこれだけの個数集めると12gになります。
面白いことに(というか当然のことですが)どの元素でもこの数あつめると”原子量”gになるのです。
鉄56をこれだけ集めたら56g、金197なら197gとなります。
わかりやすくていいですね。
で、この数値のことをアボガドロ(アヴォガドロAvogadro)数っていいます。
え、いまはアヴォガドロ定数だって?
アヴォガドロも人の名前です。
で、正確には6.022のあとにもっと数字が続くんですが、単に6って書いてある本もあるし。
このぐらいにしといたるわ。

 

それに等しい要素粒子を含む系の物質量

続いて、酸素とか2原子分子の時はどうなるのかっていうと、これもアボガド数、もといアヴォガドロ数個集まると水素で2g、酸素で32g(“分子量”gですね)になります。
原子でも分子でもそのひとかたまりを要素粒子とすれば、タンパク質などの巨大分子になってもそのまま計算出来ます。
便利でしょ?

これにはおまけがあって、気体なら何でも当てはまるのですが、アヴォガドロ数個の気体分子(ヘリウムなどは気体でも1原子分子です)が集まると、その体積はほぼ22.4リットルになります。
これも便利でしょ。
これ使って質量濃度と体積比の換算を行う人も居ます(そういうご質問が来たことがあります)、。

 

結論

1モルとは
「アヴォガドロ数個の要素粒子(原子または分子)の集合体で、その時の質量は”原子量”g(グラム)。
気体の場合は加えて22.4リットルの体積を占める」

※アヴォガドロ数:6.022×10の23乗
※SIではkg(キログラム)が標準なので、”原子量/1000″kgとなる
※モル体積:22.4リットル

※※この文章中の物理量に関しては、元々ある程度の誤差を持って定義されているもののほか、再測で更新されているものや定義方法が変わったものなど、色々な理由で異なるものもあり、絶対に正しいものではありません。
例:水素の原子量 1.00797→1.00794
モル体積 22.4リットル→22.7リットル(気圧の違い)→24.8リットル(気圧・気温の違い)
など。

ちなみにこのアヴォガドロ数がSIでの質量の基準になるかも知れないので、ISO爺マンさん、知っておかないとまずいかも。

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オキシゼムの付属消耗品、カーライムって?

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カーライムは酸素呼吸器オキシゼムに付属の消耗品です。
役目は呼気中の二酸化炭素を吸着して除去することです。

以上で基本的な説明は終わりなんですが、あまりにつまらないので例によって細かい話を続けてみます。

まず、オキシゼムという呼吸器の話からしましょう。

普通、ボンベに入った呼吸器というと、潜水士さんやダイビングする人が背負って潜るあれですね。名称は
普通に「シリンダー」って呼ばれてます。エアシリンダーとか。
で、僕ら素人が「酸素ボンベ」って言ったりするとバカにされるわけです。
「シリンダーの中身は(圧縮)空気で、酸素じゃないし。純粋酸素だったりすると呼吸するの忘れて死ぬし。」
まあまあ。

ということで、空気の薄い(あるいは無い)様な場所に行くために背負っていくというイメージです。
ところが安全用品の空気呼吸器が用いられるのは、トンネル(隧道って言います)の中や(準)閉鎖空間での作
業中に(酸素以外の)ガスが出たり酸素が急に減ったりして、酸素欠乏症(酸欠って言います)になるのを防ぐ
ためです。といっても常に付けていることは出来ないので(やはり重いです)、作業場所の近くに置いておい
て酸欠の警報が出たらすぐにマスクを被る、という使い方になります。これは普通に(圧縮)空気です。

今度はトンネルの外にいる人から見てみましょう。中で酸欠が起こりました。みんなシリンダーで呼吸をし
ながら出てきます。でも誰か足りません。助けに行かなければ。
というところで出てくるのが、みんなが持って出てきた緊急脱出用の軽いシリンダーではなく、もっと大き
く長く使えるシリンダーです。中に空気がもっと詰まっているので当然重いです。
そこで登場するのが酸素呼吸器オキシゼムなのです。

例えば10リットルの空気だと中に含まれる酸素の量は約2.1リットルです。ところが全部酸素だと10リットル
なので5倍の時間保つことになります。重量1/5ということなので、軽くていいですよね。脱出用のもこれだ
とありがたいんですが、なんでそうならないの?

ではここで空気呼吸器の構造のおさらいです。

空気呼吸器はシリンダーに圧縮空気(150気圧)を押し込みます。
外界と遮断できるマスクを付けます。
呼気はマスクからそのまま外へ、吸気はシリンダーから空気が供給されるような構造になっているので、シ
リンダーからの空気の供給が絶たれるまで呼吸出来ます。
容量が8.4リットルで、空気量は150倍の1260リットル(カタログ値)。人に依りますが概ね30分強くらい保ち
ます。

酸素呼吸器(正確には圧縮酸素循環式呼吸器)は、シリンダーに200気圧の酸素を押し込みます。
カーライムと氷(!)をセットします。
外界と遮断出来るマスクを付けます。
呼気はマスクから専用の通路を通って背中の箱に回ります。
呼気はこの中でカーライムの間を通るうちに二酸化炭素が吸収されます。
続いて酸素のシリンダーから供給された酸素と混合されて酸素濃度を21%に調節します。
そのまま冷却装置にはいって温度を下げます。
最後に吸気側の通路を通ってマスクに戻って、また人に吸われます。
シリンダー容量は1.7リットルで、200気圧で340リットル(カタログ値)。呼気中の酸素濃度は0にはならない
ので酸素の供給量は空気の1/5よりもかなり少なくなり、個人差はあっても概ね150分保つそうです。

オキシゼムの方が長時間保つし、シリンダー小さいし、いいことずくめのように見えます。が、次の項目を
見て下さい。

ライフゼムの重量は9.8kg。オキシゼムは12kgに冷却用の氷を合わせると13.4kg。4割増!
ライフゼムのコストはエアの再充填のみ。
オキシゼムも酸素の再充填(これは出来る場所がエアー以上に限定されるため難しい)が必要ですが、それ以
外のコストとして、カーライム(二酸化炭素吸収剤)は一度封を開けると反応が止められないため使い捨てに
なります。氷の供給も必要です。
手間かかって仕方ないですね。
どっち使います?
今までのところでいろいろな疑問が出たと思います。
・さっき酸素は危ないって言ったのに。
・なんで氷が要るの?
・カーライム(二酸化炭素吸収剤)の中身は?
・どうやって二酸化炭素を吸収してるの?
・もっと簡単(で安価)な方法はないの?

では回答を。

 

酸素を呼吸すると危ない?

人間が寝てるときにも呼吸を忘れないのは、空気中のわずかな二酸化炭素のおかげだそうです。これが
あることで「外部の空気を取り入れなければ」という反射が起きて自動的に呼吸が続くそうです。
ところが、純粋酸素など二酸化炭素を含まない”空気”を呼吸すると、体の方が安心してそれ以上の呼吸を
自動的にはしなくなってしまうんだとか。
それでも意識して呼吸を続けることが出来ればOKなんですが、ついつい”忘れ”てしまう(!)とアウト。
要するに血中酸素濃度ではなく、吸気中の二酸化炭素濃度で判断しているからなんですが、ちょっと怖い
ですね。これが潜水などの際に”酸素”ボンベを用いない理由のひとつだそうです。

 

なんで氷が要るの?

JISの規定(JIS M 7601:2001 圧縮酸素型循環式呼吸器)に「(吸気の)呼気温度からの温度上昇は,6℃以
下でなければならない。」という項目(5.1.2b)があり、その冷却剤として必要になります。
以前(20世紀)は13℃だったのが、”長時間使用時の負担軽減”のために変更になったそうです。

 

カーライムの中身は?

カーライムの主成分は水酸化カルシウム(Calcium hydroxide)で化学式はCa(OH)2です。
日本名では消石灰(slaked lime)で、これが概ね80%程度を占めます。

 

どうやって二酸化炭素を吸収しているの?

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
水酸化カルシウム + 二酸化炭素 → 炭酸カルシウム + 水

という反応を起こして二酸化炭素を吸収しています。

ちなみに
水酸化カルシウム Calcium hydroxide     Ca(OH)2 消石灰(しょうせっかい)
酸化カルシウム  Calcium oxide、quick lime CaO   生石灰(せいせっかい)
炭酸カルシウム  calcium carbonate     CaCO3
結構間違える人が居ます。特に水酸化カルシウムは強アルカリ性なので、手に付いたりするとすぐに
洗い流さねば。
うる星やつらに惑星教師CAO2というのが出てきますが、黒板用のチョークは炭酸カルシウムCaCO3または
石膏です。
念のため。

 

もっと簡単(安価)な方法は?

原理的には
1)呼気に酸素を混ぜて、割合を呼吸出来るレベルにする
2)前項で作成した気体(空気)を吸気にする。
以上なんですが、以下のような要件があるので(前に書いたものと重複もあります)、なかなか難しい
ところです

 

外気と混ざらないようにする

→酸欠だけではなく毒性ガスが含まれる場合もあるので、マスクや呼気・吸気の通路は密閉が必要です。

効率を上げるために酸素ガスを用いる

→空気の充填が出来るスタンドはたくさんありますが、酸素となると限られた設備でしか出来ないので
充填コストに運搬のコストなども含まれてしまいます。

長時間の利用を可能にするために、高圧ガス(酸素)を用いる

→200気圧の酸素を使用するので150分保つのですが、10気圧だと7~8分しか保ちません。
またそのために高圧用のシリンダーが必要になります。

吸気の温度を上げない

→放っておくと水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応によって発生する熱で、吸気の温度がどんどん
上がっていきます。割と簡単に40℃を超えてしまうそうなので、かなり息苦しくなるそうです。
冷却方法としては、クーラーを持って歩くわけにも行かないので今のところ氷がサイズや重量、効率
の面で一番にいいとか。
ドライアイス? 取扱がうまくできるならいいとは思いますが、コストが・・・

 

ということで、行かなくてすむのなら呼吸器が必要な場所には行きたくないんですが、誰かが行かなければ
ならないのなら、出来るだけ安全にということになります。
私ですか。呼吸器を設置してある隧道の作業で、立坑から数kmの距離を行ったことがあります。”なんかあっ
たときには”ということで、呼吸器の場所だけチェックしてあとは忘れて作業します。呼吸器があれば火(爆
発)や水が出ない限り逃げられます。
そのためにもしっかりした整備と設置を。

カーライムの綴りは「KALIME」です。消石灰(水酸化カルシウム)が「slaked lime」なので、その辺りから来たの
かなと。

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ライカのセオドライトを実際使ってみた!

電子式精密セオドライト T3000

ライカの最高峰セオドライトT3000

T3000です。
名機です。
現在のライカジオシステムズ(ライカ)の測量機のブランドがまだ「ウィルド(WILD)」だった頃、 民生用世界最高レベルの精度を誇った電子式セオドライト(経緯儀)です。

※WILDはワイルドではありません、ドイツ語なので”ウィルド”って読みます。
でもガッチャガッチャマンの怪しいドイツ語ではヴィルトって読んでしまいそうに・・・
ちなみにライカでは”セオドライト”ではなく、”セオマット”って言ってました。
また、日本などの一部では”トランシット”って言ってる人も居ました。
(ガッチャガッチャマンの同級生の某超有名大学の教授も言うてました、おっさん間違うてんで。)

 

測角精度

どのくらい精度がいいかというと、測角精度が0.5秒(σ1)。
角度0.5秒って想像出来ますか?
角度1度(一周の360分の1)の60分の1(1分)のそのまた60分の1(1秒)の更に半分!
約100m先の0.25mm(シャープペンシルの芯の半分!)をこっちから見たときの幅が0.5秒です。
この精度ということは、200m離れてピストルで撃ったらそのうちの概ね2/3の弾丸の先っぽが0.5mmの芯に命中って、漫画でもない命中率です。
10m先まで来たら0.025mm=25μm

実はライカではこの精度は珍しくなく、T3000とその派生機種(T3000A、T3000D、TM3000など)以外にも、T2000、T2002、TC2002TCA2003、TM5100、TM5100A、など数多くの機種がこの精度を備えていました。
現在でも、数機種がラインアップにあります。
日本のメーカー?
最近は頑張って同等の数字をたたき出す機種があります。

現在でも凄いこの精度を1989年に実現していた訳で、当時としては羨望のマシン。
先ほどの変教授や某大手電機メーカーの担当社員、某橋梁建設の職人、などから
「これ欲しかったんやけど」
とか
「いっぺん使うてみたかった」
「やっと手に入った」
などの声を聞いております。

ちなみに最小表示単位は0.1秒なので10m先で5μm。
昔の言い方だと、5ミクロン!
これ、一万円札(≒0.1mm)を20枚にスライスできる厚さです。
1万円札を平らなところに置いて、T3000で覗いて。
0.1秒動かす毎にパン切り器でスライスしていったら20枚に増えます。
すぐばれますが。

 

使用方法

ガッチャガッチャマンは、このT3000を実は使ったことがあります。
何が凄いって、0.1秒表示の場合、最後の一桁が静止してくれないのです。
常にふらふら動いていて、実は機械のせいではなく、環境のせいだったのです。
つまり、室内に於いても外を通る車等による振動、人の動き、わずかな空気の流れ、室温の変化、などの影響で微妙にT3000が動き、これを検出するとんでもない感度の良さを持っていたということです。
ということで、残念ながら1万円札を20倍にする方法は無理だと言うことがわかりました。

実用上でも人が目で見て認識するという方法は困難なので、ライカ製のシステム(TMSやAxyzなど)に組み込んで、計測値をPCで平均計算するという使用方法がほとんどです。
そのTMS(Theodolite Measuring System セオドライトメジャリングシステム)は2~8台のT3000を使用して、三角測量(角度のみを計測する)の方法(非接触)で、概ね30μm以内の精度でxyzの三次元座標を計測することが出来る、という化けもんシステムでした。

※TMSという名称はアメリカ向けだそうで、本来はManCATというソフトウェア名がシステム名になったものだと聞いたことがあります。
現在のライカにはTMS(Tunnel Measurement System)という同名の別物が存在するので、混同しないように(時代が違うので混同しようがないという話も)

さてこの名機T3000、高性能が故にいろいろな無理難題を背負わされる事になりました。

 

オートコリメーション測定

※オートコリメーション測定とは
鏡の方を向いたとき、正確に正対していれば自分の目が見えます。
セオドライトでも望遠鏡内に専用のターゲットが組み込まれていれば、それが見えます。
もし正対していないなら、セオドライトの角度を変えることで正対するように持って行けます。
このときの角度の変化量によって鏡がどちらにどのくらい傾いているかが正確に求められます。
これをオートコリメーション測定といいます。

オートコリメーション測定をするために、望遠鏡内にオートコリメーション用のターゲットを組み込みました。
この機種はT3000Aです。

 

PCコントロール

繋いであるPCからのコントロールを行うために、望遠鏡を回転させるためのモーターを内蔵しました。
望遠鏡の口径が大きいのでどの向きでも自由というわけではありませんが、ほぼ任意の方向に向けることができます。
PCから水平角と鉛直角を指定してやればそちらを向きます。
本機には専用のジョイスティック(!)が付属していて、それでの操作も可能です。
この機種はTM3000です。

 

測距(距離測定)

ターゲットまでの距離を測ることが出来れば、1台だけでxyzを求めることが可能になります。
(距離測定が出来ない場合は三角測量になるので最低2台必要)
TM3000の上に光波距離計(英語ではDistancemeter、ドイツ語ではDistomat)を載せてると距離と角度の同時計測が可能になります。
TM3000の上にDI1600やDI3000という距離計を載せたものがTM3000Dになります。

※TM3000には自動視準(ターゲットの真ん中に望遠鏡を向ける機能)も付いているので、PCと繋いで自動計測をすることも出来ます。

 

計測位置確認

TM3000にレーザーマーカーを取り付けることで、視準位置に赤いレーザーのマークが映り、どこを視準して計測しているかがわかるようになります。
もう1台のT3000と組み合わせることで三角測量も楽になります。
この機種がTM3000Lです。

 

計測位置視認

TM3000の望遠鏡内にビデオカメラを組み込んで、計測時にどこを視準しているかをPCなどで確認出来るようになります。
この機種はTM3000Vです。

 

測距+視認

TM3000Vに距離計DI2002を載せると、測距時にもどこを視準しているかを見ることが出来ます。
このTM3000に距離計とビデオが付いた機種がTM3000D/Vです。

 

拡張機能一覧

元々の素材が大変良かったT3000の特徴と、追加機能を付加するに際して欠かせない性能アップもここでまとめてみましょう。

基本機能

測角 アブソリュート・エンコーダー使用
標準偏差(水平角・鉛直角ともに)0.5秒(DIN18723)
最小表示0.1秒
望遠鏡 口径52mm、パンフォーカル式(合焦距離によって視野角が変化する)
最短合焦距離0.6m(補助レンズ使用で0.5m)
自動補正 二軸液体式、作動範囲(縦横とも)3分、設定精度0.1秒

 

追加機能

モーター 50度/秒(縦横とも)
自動視準 視準精度1km先で15mm以内
視準時間30秒以内
測距
(DI2002の場合)
標準偏差1mm±1ppm
測定時間3秒以内
測定範囲1素子プリズムで最大3.5km

ビデオ部分は詳細不明ですが、オートフォーカスだそうです。

 

用いられるシステムと目的

TMS(=ManCAT) セオドライト(測角機能のみ)を用いた精密三次元計測。室内がメイン。
車、航空機、電車等の製造管理に多く使用され、ほとんどのメーカーに納入されていたと言われる
ATMS AutomaticのTMSという意味で、TM3000LとTM3000Vを用いて、屋外でもセオドライト三次元計測システムが使用できるようにしたもの。
APS Automatic Polar Systemの略。TM3000Dを用いてターゲットプリズムの位置変化を捉える変位計測システム。特にダムや橋梁などの屋外の大規模構造物の管理に使用された。
Axyz アクシーズと読む。前記3システムを統合したシステム。3システムがMS-DOSベースなのに対してWindowsベースとなる。

計測対象

さて、いったい誰がこのとんでもない機械を使って、何を計測するのでしょうか?

ちょっと前にヒントがあります。
「車、航空機、電車等の製造管理に多く使用され」
ガッチャガッチャマンが実際に訪問したことがあるユーザーの用途では、あまり細かく書けませんが航空機、人工衛星、大型エンジン、大型発電機、といったところです。
実際に人工衛星関連は複数の会社で納品に行ったので、そのような用途には良い計測器&システムだったのでしょう。
後継機種を購入された所もあります。
ちなみに海外にも行ってます(機材だけですが)。
いずれも工作精度が数10μmのオーダーで必要なものばかりです。

 

計測

では例としてTMS(ManCAT)での計測の要領を挙げてみましょう。

 

 計測は室内で

室内で空調を効かせておくと
“温度変化が少なく”
“直射日光による歪みが発生せず”
“風による影響がない”
という精密計測に必要な最低条件を満たすことになります。
ただし、空調による風や振動は避けなければなりません。

 

 計測は明け方前

計測時刻は概ね午前3時~5時くらいの日の出前で、
“外部からの振動(車や鉄道、人などによるもの)がほぼ無い”
“日照による温度変化や建物の歪みも少ない”
という条件です。

 

 計測機は事前設置

計測する1時間以上前に機材の設置を行うことで、環境の温度と計測機の内部温度を同一
にすることで、温度変化による誤差を排除します。
設置直後は自重で位置が変わる可能性が高いので、それを避ける意味もあります。

 

 実測時間は短く

一式の計測は概ね10~15分以内で終わらせます。
如何に良い環境を整えても、時間の経過とともに外乱の影響を受ける確率は増えていきま
す。
実測時間を短くすることでそのような影響を最小限に出来るので、計測時間を短くする手
早い計測が必要です。
また、前記のような空調の影響を排除するために、計測中は空調を停止することもあるの
で、その場合も温度変化の起こる前に計測を終える必要があります。

 

 データはその場で検証

日を改めると同条件での計測は出来ないので、一式全部の計測を再度行う必要があります。
データをすぐ確認すれば、再計測が必要になった場合でもその部分だけを続けて計測する
ことが可能です。

 

 計測時重要事項

その他注意すべき点も多々あります。

計測機の精度が尋常ではないので、基準長(スケールバーなど)やターゲット(罫書きやシー
トなど)位置などの精度が重要になります。
計測(視準等)は一人で行います。
複数人員で計測すると視準の癖などで、ほぼ間違いなく誤差が発生します。
せっかく計測機の精度が生かされません。
計算結果は1/1000mmの桁まで出力されますが、精度としては1/100~3/100mm程度になる
ので有効桁数に注意してください。

 

欠点

T3000にもいくつか問題点というか使いにくいところもありました。

 

 表示言語

日本だけの問題ですが、操作パネルの表示が7セグメント表示なので、日本語表示が出来
ません。
英語等の表示は可能なので、英語わかれば問題ないんですが。
なお、アルファベットでも7セグメントだと癖があるので慣れないと読みにくいのは一緒
です。

 

 巨大対物レンズ

望遠鏡のパンフォーカルの対物レンズの口径が大きいので、縦に一回転出来ません。
このせいで大きなパラボラアンテナの計測に使う事が出来なかったという話を聞いたこと
があります。
方法はまあ内緒ですが。

 

 測量機ではない

測量機としての認定がないので、公共測量業務には使用できません。前の方にも書きま
したが最終桁(0.1″)が静止しないので読みにくく、かなり重いことと合わせて実用的に
はいろいろ問題があります。
※公共測量に使用される測量機は国土地理院の認定と1年以内の検定が必要ですが、T3000
は測量機の認定を取っていないので公共測量には使用できません。
実は使用した人が多くない理由の一つがこれです。測量に使用できないセオドライトを
何百万も出して買う人は普通は居ないですから。

T3000は名機ですが、現在ではほとんど使用されていません。
理由は機材が古くなってメーカーサポートも難しくなったことや、後継機種が出たこと、古い
プログラムは古いPCでなければ動かない、などです。
ガッチャガッチャマンはManCATとAPSしか見たことありません。残念です。

実はライカ(WILD)にはこのT3000よりも50年前に同精度のセオドライト(アナログ式です)があっ
たという、とんでもない話もあります。その辺はまたそのうちに。