ライカのセオドライトを実際使ってみた!

電子式精密セオドライト T3000

ライカの最高峰セオドライトT3000

T3000です。
名機です。
現在のライカジオシステムズ(ライカ)の測量機のブランドがまだ「ウィルド(WILD)」だった頃、 民生用世界最高レベルの精度を誇った電子式セオドライト(経緯儀)です。

※WILDはワイルドではありません、ドイツ語なので”ウィルド”って読みます。
でもガッチャガッチャマンの怪しいドイツ語ではヴィルトって読んでしまいそうに・・・
ちなみにライカでは”セオドライト”ではなく、”セオマット”って言ってました。
また、日本などの一部では”トランシット”って言ってる人も居ました。
(ガッチャガッチャマンの同級生の某超有名大学の教授も言うてました、おっさん間違うてんで。)

 

測角精度

どのくらい精度がいいかというと、測角精度が0.5秒(σ1)。
角度0.5秒って想像出来ますか?
角度1度(一周の360分の1)の60分の1(1分)のそのまた60分の1(1秒)の更に半分!
約100m先の0.25mm(シャープペンシルの芯の半分!)をこっちから見たときの幅が0.5秒です。
この精度ということは、200m離れてピストルで撃ったらそのうちの概ね2/3の弾丸の先っぽが0.5mmの芯に命中って、漫画でもない命中率です。
10m先まで来たら0.025mm=25μm

実はライカではこの精度は珍しくなく、T3000とその派生機種(T3000A、T3000D、TM3000など)以外にも、T2000、T2002、TC2002TCA2003、TM5100、TM5100A、など数多くの機種がこの精度を備えていました。
現在でも、数機種がラインアップにあります。
日本のメーカー?
最近は頑張って同等の数字をたたき出す機種があります。

現在でも凄いこの精度を1989年に実現していた訳で、当時としては羨望のマシン。
先ほどの変教授や某大手電機メーカーの担当社員、某橋梁建設の職人、などから
「これ欲しかったんやけど」
とか
「いっぺん使うてみたかった」
「やっと手に入った」
などの声を聞いております。

ちなみに最小表示単位は0.1秒なので10m先で5μm。
昔の言い方だと、5ミクロン!
これ、一万円札(≒0.1mm)を20枚にスライスできる厚さです。
1万円札を平らなところに置いて、T3000で覗いて。
0.1秒動かす毎にパン切り器でスライスしていったら20枚に増えます。
すぐばれますが。

 

使用方法

ガッチャガッチャマンは、このT3000を実は使ったことがあります。
何が凄いって、0.1秒表示の場合、最後の一桁が静止してくれないのです。
常にふらふら動いていて、実は機械のせいではなく、環境のせいだったのです。
つまり、室内に於いても外を通る車等による振動、人の動き、わずかな空気の流れ、室温の変化、などの影響で微妙にT3000が動き、これを検出するとんでもない感度の良さを持っていたということです。
ということで、残念ながら1万円札を20倍にする方法は無理だと言うことがわかりました。

実用上でも人が目で見て認識するという方法は困難なので、ライカ製のシステム(TMSやAxyzなど)に組み込んで、計測値をPCで平均計算するという使用方法がほとんどです。
そのTMS(Theodolite Measuring System セオドライトメジャリングシステム)は2~8台のT3000を使用して、三角測量(角度のみを計測する)の方法(非接触)で、概ね30μm以内の精度でxyzの三次元座標を計測することが出来る、という化けもんシステムでした。

※TMSという名称はアメリカ向けだそうで、本来はManCATというソフトウェア名がシステム名になったものだと聞いたことがあります。
現在のライカにはTMS(Tunnel Measurement System)という同名の別物が存在するので、混同しないように(時代が違うので混同しようがないという話も)

さてこの名機T3000、高性能が故にいろいろな無理難題を背負わされる事になりました。

 

オートコリメーション測定

※オートコリメーション測定とは
鏡の方を向いたとき、正確に正対していれば自分の目が見えます。
セオドライトでも望遠鏡内に専用のターゲットが組み込まれていれば、それが見えます。
もし正対していないなら、セオドライトの角度を変えることで正対するように持って行けます。
このときの角度の変化量によって鏡がどちらにどのくらい傾いているかが正確に求められます。
これをオートコリメーション測定といいます。

オートコリメーション測定をするために、望遠鏡内にオートコリメーション用のターゲットを組み込みました。
この機種はT3000Aです。

 

PCコントロール

繋いであるPCからのコントロールを行うために、望遠鏡を回転させるためのモーターを内蔵しました。
望遠鏡の口径が大きいのでどの向きでも自由というわけではありませんが、ほぼ任意の方向に向けることができます。
PCから水平角と鉛直角を指定してやればそちらを向きます。
本機には専用のジョイスティック(!)が付属していて、それでの操作も可能です。
この機種はTM3000です。

 

測距(距離測定)

ターゲットまでの距離を測ることが出来れば、1台だけでxyzを求めることが可能になります。
(距離測定が出来ない場合は三角測量になるので最低2台必要)
TM3000の上に光波距離計(英語ではDistancemeter、ドイツ語ではDistomat)を載せてると距離と角度の同時計測が可能になります。
TM3000の上にDI1600やDI3000という距離計を載せたものがTM3000Dになります。

※TM3000には自動視準(ターゲットの真ん中に望遠鏡を向ける機能)も付いているので、PCと繋いで自動計測をすることも出来ます。

 

計測位置確認

TM3000にレーザーマーカーを取り付けることで、視準位置に赤いレーザーのマークが映り、どこを視準して計測しているかがわかるようになります。
もう1台のT3000と組み合わせることで三角測量も楽になります。
この機種がTM3000Lです。

 

計測位置視認

TM3000の望遠鏡内にビデオカメラを組み込んで、計測時にどこを視準しているかをPCなどで確認出来るようになります。
この機種はTM3000Vです。

 

測距+視認

TM3000Vに距離計DI2002を載せると、測距時にもどこを視準しているかを見ることが出来ます。
このTM3000に距離計とビデオが付いた機種がTM3000D/Vです。

 

拡張機能一覧

元々の素材が大変良かったT3000の特徴と、追加機能を付加するに際して欠かせない性能アップもここでまとめてみましょう。

基本機能

測角 アブソリュート・エンコーダー使用
標準偏差(水平角・鉛直角ともに)0.5秒(DIN18723)
最小表示0.1秒
望遠鏡 口径52mm、パンフォーカル式(合焦距離によって視野角が変化する)
最短合焦距離0.6m(補助レンズ使用で0.5m)
自動補正 二軸液体式、作動範囲(縦横とも)3分、設定精度0.1秒

 

追加機能

モーター 50度/秒(縦横とも)
自動視準 視準精度1km先で15mm以内
視準時間30秒以内
測距
(DI2002の場合)
標準偏差1mm±1ppm
測定時間3秒以内
測定範囲1素子プリズムで最大3.5km

ビデオ部分は詳細不明ですが、オートフォーカスだそうです。

 

用いられるシステムと目的

TMS(=ManCAT) セオドライト(測角機能のみ)を用いた精密三次元計測。室内がメイン。
車、航空機、電車等の製造管理に多く使用され、ほとんどのメーカーに納入されていたと言われる
ATMS AutomaticのTMSという意味で、TM3000LとTM3000Vを用いて、屋外でもセオドライト三次元計測システムが使用できるようにしたもの。
APS Automatic Polar Systemの略。TM3000Dを用いてターゲットプリズムの位置変化を捉える変位計測システム。特にダムや橋梁などの屋外の大規模構造物の管理に使用された。
Axyz アクシーズと読む。前記3システムを統合したシステム。3システムがMS-DOSベースなのに対してWindowsベースとなる。

計測対象

さて、いったい誰がこのとんでもない機械を使って、何を計測するのでしょうか?

ちょっと前にヒントがあります。
「車、航空機、電車等の製造管理に多く使用され」
ガッチャガッチャマンが実際に訪問したことがあるユーザーの用途では、あまり細かく書けませんが航空機、人工衛星、大型エンジン、大型発電機、といったところです。
実際に人工衛星関連は複数の会社で納品に行ったので、そのような用途には良い計測器&システムだったのでしょう。
後継機種を購入された所もあります。
ちなみに海外にも行ってます(機材だけですが)。
いずれも工作精度が数10μmのオーダーで必要なものばかりです。

 

計測

では例としてTMS(ManCAT)での計測の要領を挙げてみましょう。

 

 計測は室内で

室内で空調を効かせておくと
“温度変化が少なく”
“直射日光による歪みが発生せず”
“風による影響がない”
という精密計測に必要な最低条件を満たすことになります。
ただし、空調による風や振動は避けなければなりません。

 

 計測は明け方前

計測時刻は概ね午前3時~5時くらいの日の出前で、
“外部からの振動(車や鉄道、人などによるもの)がほぼ無い”
“日照による温度変化や建物の歪みも少ない”
という条件です。

 

 計測機は事前設置

計測する1時間以上前に機材の設置を行うことで、環境の温度と計測機の内部温度を同一
にすることで、温度変化による誤差を排除します。
設置直後は自重で位置が変わる可能性が高いので、それを避ける意味もあります。

 

 実測時間は短く

一式の計測は概ね10~15分以内で終わらせます。
如何に良い環境を整えても、時間の経過とともに外乱の影響を受ける確率は増えていきま
す。
実測時間を短くすることでそのような影響を最小限に出来るので、計測時間を短くする手
早い計測が必要です。
また、前記のような空調の影響を排除するために、計測中は空調を停止することもあるの
で、その場合も温度変化の起こる前に計測を終える必要があります。

 

 データはその場で検証

日を改めると同条件での計測は出来ないので、一式全部の計測を再度行う必要があります。
データをすぐ確認すれば、再計測が必要になった場合でもその部分だけを続けて計測する
ことが可能です。

 

 計測時重要事項

その他注意すべき点も多々あります。

計測機の精度が尋常ではないので、基準長(スケールバーなど)やターゲット(罫書きやシー
トなど)位置などの精度が重要になります。
計測(視準等)は一人で行います。
複数人員で計測すると視準の癖などで、ほぼ間違いなく誤差が発生します。
せっかく計測機の精度が生かされません。
計算結果は1/1000mmの桁まで出力されますが、精度としては1/100~3/100mm程度になる
ので有効桁数に注意してください。

 

欠点

T3000にもいくつか問題点というか使いにくいところもありました。

 

 表示言語

日本だけの問題ですが、操作パネルの表示が7セグメント表示なので、日本語表示が出来
ません。
英語等の表示は可能なので、英語わかれば問題ないんですが。
なお、アルファベットでも7セグメントだと癖があるので慣れないと読みにくいのは一緒
です。

 

 巨大対物レンズ

望遠鏡のパンフォーカルの対物レンズの口径が大きいので、縦に一回転出来ません。
このせいで大きなパラボラアンテナの計測に使う事が出来なかったという話を聞いたこと
があります。
方法はまあ内緒ですが。

 

 測量機ではない

測量機としての認定がないので、公共測量業務には使用できません。前の方にも書きま
したが最終桁(0.1″)が静止しないので読みにくく、かなり重いことと合わせて実用的に
はいろいろ問題があります。
※公共測量に使用される測量機は国土地理院の認定と1年以内の検定が必要ですが、T3000
は測量機の認定を取っていないので公共測量には使用できません。
実は使用した人が多くない理由の一つがこれです。測量に使用できないセオドライトを
何百万も出して買う人は普通は居ないですから。

T3000は名機ですが、現在ではほとんど使用されていません。
理由は機材が古くなってメーカーサポートも難しくなったことや、後継機種が出たこと、古い
プログラムは古いPCでなければ動かない、などです。
ガッチャガッチャマンはManCATとAPSしか見たことありません。残念です。

実はライカ(WILD)にはこのT3000よりも50年前に同精度のセオドライト(アナログ式です)があっ
たという、とんでもない話もあります。その辺はまたそのうちに。

意外に知らない?濁度の単位について

単位についての基本!
今回は、前回の続きです。

あなたは単位の意味を分かろうとする?あきらめる?【基本編】

濁度って、どうやって測るんだろう?
そんな疑問にお応えするのが、この私家庭内ホームレス・ISO爺マンです。

 

 

濁り具合の単位

計測器でも、けっこうアヤシイ単位があったりする、
ってことでしたね。

私もこれまでいろいろな計測器に携わってきましたが、
一番アヤシイのは濁度計じゃないかな、
と思います。

濁度計

濁度というのは水質の指標で、水の濁り具合を表します。

濁度0が透明で、数値が大きくなるほど濁りがひどいということです。

因みに、濁度は厚生労働省が定めている水質基準51項目のうちの1つで、水道水は濁度2以下が求められています。

もう少し詳しく書くと、51項目のほとんどが細菌や化学物質なのですが、人が飲む水なので、官能的な基準も含まれます。
味、臭気、色度、濁度の4つです。

味、臭気については、単に「異常でないこと」と決められているだけなので、純粋に官能検査のみ、ということになります。
色度と濁度は水質計が使われます。

 

 

 

濁度の単位 = 「度」

さて、やっと単位の話に入ります。

日本工業規格JISでは、濁度の単位は「度」です。

水1L中に微粒子の粉末1mgが十分撹拌された状態の濁り具合が、1度となります。

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この微粒子の粉末は、以前はカオリンという陶磁器の原料に使用される粉が使われていました。
しかし、濁度の標準物質としては均一性や安定性があまり良くないので、現在では、より適したホルマジン溶液が用いられることが多いようです。

もっと詳しく書くと、平成15年に改正された水道法では、より均一性に優れたポリスチレン系粒子が採用されました。
ところが、何分これが高額で、まだ一般的に普及するところまでは至っていないようです。

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mg/L

しかし、水質計としての濁度の単位が「度」では、上記の定義を説明する必要が出てきます。
で、「mg/L」が濁度計の単位でよく採用されることになりました。

でも、濁り具合の単位としては、やっぱりしっくりこないですね。

上の定義をきちんと知らないと、なんで水の濁り具合の単位が「mg/L」なの?
ってなりませんか?

しかも、通常水の濁りというのは、何がどれだけの量混じって濁っているのか分からないわけで、それを実際に測りもしないでmgと表すのはそもそもムリがあります。

例えば、濁度10mg/Lであれば、カオリン又はホルマジンが1Lに10mg混じった時と同じくらいの濁り具合、
という説明を加えないと意味が通じません。

元々は、SSという水質項目があって、これはsuspended solidの略で懸濁物質または浮遊物質を表します。
水1L中にどのくらいの量の濁りのもとになる物質が含まれているのか、という指標です。
これは水の濁り具合ではなく、実際に対象の水を蒸留したりろ過したりして残留物質の質量を秤って求めます。
ですから、単位は間違いなくmg/Lとなります。

よく濁度と混同されることがありますが、意味が違います。

そういうこともあってか、少し前はppm表示のある濁度計もありました。

ところが、これはよりおかしなことになってしまいます。
何故かと言うと、ppmは百万分率を示すので、%と同じような意味です。
ということは、分母と分子は同系列のものでなければなりません。

濁度の場合、分母はリットルLで体積、分子はミリグラムmgで質量です。
すなわち1Lの水に濁度標準物質が◯mg含まれる状態を表すのであって、率を表すわけではありません。
ppmで表すこと自体が不合理です。

今は計量に対する概念が以前より厳格になって、さすがにppm表示の濁度計はあまり見当たらなくなりました。

現在は、ISO規格に則ったホルマジン基準のNTUやFTUが用いられることが多くなっています。
なお、他にFNUやFAUというものもあります。

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(参考)

FTU (Forumajin Turbidity Units) :ホルマジン濁度単位

NTU (Nephelometric Turbidity Units) :比濁法濁度単位(散乱光測定での濁度単位)

FNU (Forumajin Nephelometric Units) :ホルマジン比濁法単位 ≒NTU

FAU (Forumajin Attenuation Units) :ホルマジン減衰単位(透過光測定での濁度単位)

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気象観測とアネモマスター風速計

株式会社レックスでも設備している風速計の一つに「アネモマスター」という熱式風速計があります。

アネモマスター風速計

画像で見ると、こんな感じ。
皆さん、アネモマスターの語源をご存知でしょうか。

 

 

アネモマスターの語源

”アネモマスター”は日本カノマックス株式会社の風速計の登録商標です。
勝手に使ってはいけません。
一般名詞としての風速計は

”アネモメーターAnemometer”

または

”Wind Gauge”

になります。

アネモメーターには、風速計だけではなく風力計という意味もあります。

このアネモメーターの語源は、ギリシャ語で「風」を意味する”anemos”だと言われています。そこから風速計の名称としてつけられたのですね。

たまに天気予報で予報士の人が

「アネモメーターの観測によると・・・」
などと言う時があります。
その時は「風」の話なんだなと思って聞いてください。

アネモネ(学名Anemone coronaria)という花がありますが、これの語源も同じだそうです。
”風の花”ってことですね。

何故アネモネが風なのかはよくわかりませんけど。
春一番の頃に咲くからっていっても、それは日本の話なのでギリシャ関係ないし。
ギリシャでも春一番があれば。
ちなみにクリモマスター(これもカノマックスの登録商標)という商品もありますが、こちらはClimate(気象、環境)からの造語です。

 

アネモマスター 「風」(anemometerからの造語)
クリモマスター  「気象、環境」(Climateからの造語)

 

 

 

アネモマスター風速計

アネモマスター風速計には、熱線式風速計ベーン式風速計の2種類があります。
「風速計」という名前ですが、台風や低気圧、フェーンなどの風速を測ることは出来ません。
これらは「気象観測用風速計」を用いて計測します。

じゃ、アネモマスターは何の風速を測るのか、いや、それよりもアネモマスターと気象観測用の風速計はどこが違うのか。
気になりませんか?
ならない人は、ページを閉じていただいて結構です(笑)

まずはじめに気象観測に使用できる機材なんですが、これは気象庁のHP

 

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/shinsei/kentei/index.html

 

に「検定対象測器[PDF形式:83KB](気象業務法第9条)」として載っていて、その中に風速計の種類の記載があります。

ここには

 

風杯型風速計

  • 風車型風速計

 

  • 超音波式風速計

 

 

3種があり、熱線式(およびベーン式)風速計はありません。

 

この時点で、気象観測には使用できないことになります。
なんで、熱線式風速計は気象観測に使えないんだ?
と思いませんか。

 

 

気象観測用に向かない風速計

この熱線式風速計の原理は次の通りです。

 

①熱線に電流を流して加熱する。

②熱線に風が当たるとその強さに比例して温度が下がる。

③温度が下がらないように電流の量を増やし、平衡状態にする。

④この電流量の増減で風速を求める。

⑤ただし、風の温度によって電流量も変化するので、気温の補償も同時に行っている。

 

この②で熱線に風が当たっていますが、長期使用すればするほど空気中のゴミなども熱線にあたる可能性が増えます。

ゴミがあたると・・・

熱線は破損します。
つまり長期使用に向かないということで気象観測用になっていないのです。
他の風速計はどうかっていうと、風杯型(お椀が3つ水平に回っている分)は、ゴミが少々あたった位では壊れません。
風車型(飛行機のような形をしていてプロペラが回る形式)も、同様です。
超音波式にいたっては超音波の送受部分をうまくカバーしておくと、全く風があたることなく風速計測が出来ます。

 

それでは、気象観測に使えない風速計の存在意味は何でしょうか。
実はメーカーのHPに答が書いてあります。

各機種のデータのページに”用途”というのがあって、そこを開くと

 

空調冷凍機器・設備の運用/管理 試験/開発、建物内の風速・換気風量計測、生産設備や生産工程の風速確認・調整、製品の開発や検査工程

というふうに書いてあります。

つまり、工場やビル環境、工事現場での計測などです。
たとえば、機材の性能調査・設計の適合性調査・粉塵の流れや冷却効率の環境調査などがあります。

個人でも役に立つ場合があります。

たとえば、エアコン等の吹き出し口や部屋のあちこちでの風速、換気扇等の吸い込み容量を計測する場合です。

ハカレンジャーに関係のあるレックスは、会社です。

そのレックスに関係の深いところでいうと、

 

工事現場では

・立坑や隧道等に於ける換気機材の性能

・立坑や隧道内での換気ダクトなどの取付状況

・空気の滞留場所の確認

・熱中症予防のエアコンの冷気の状況

 

工場関連では

・クリーンルームなどでの空気の動き

・生産工程での空気の動き(冷却や乾燥など)

・機材の性能試験(送風機とか)

 

実際にガッチャガッチャマンが行った現場の例でいうと、

○隧道(ずい道~要するにトンネル)工事現場における安全対策として行われる換気(酸欠や可燃性ガスや毒性ガスの発生などの対策)状況の確認。

→送風機の性能確認や、実際に作業場所まで空気が流れているかなどを計測します。

○空調設備の状況確認

→エアコンや送風機などの吹き出し状況や室内の風の回り方による効率的な空調が出来ているか、埃や粉塵が舞って(例えば)食品の上に行かないか、煙草の煙が流れていかないか、など多様です。

 

特にガッチャガッチャマンは煙草が苦手なので、持ち歩いててもいいかも知れません。文句言うのには裏付けが必要ですから。

 

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熱線式風速計の原理

 

さて、アネモマスターは熱線式風速計なので、熱線式風速計の原理をもうちょっと詳しく
見てみましょう。
(参考文献:日本カノマックス技術情報、小林理研ニュース、他)

まず、周囲の温度よりも高温の物体があるとします。
放っておけば、この物体から回りの空気へ熱が移動して物体の温度は下がります。
このとき、空気の流れ(風)があって物体にあたっていれば、熱の移動量が大きくなって物体の温度の下がり方が早くなります。
※風がない場合は物体から空気へ熱が移動すると周囲の空気の温度が上がります。
空気がその場にとどまっていれば(あるいは動きが少なければ)、熱の移動量は少なくなっていきます。

実際には地球上では空気の対流が起きるので、ゆっくりですが常に物体よりも温度の低い空気が入ってくることで熱が常に移動し続けることになります。
風が吹くと、常に温度の低い空気が多く当たり続けることになるので、熱の移動量が大きくなります。

→要するにおでんの芋が熱いときに、箸で持ったままにしておくとだんだん冷めてきますが、ふうふうと吹いた方が早く冷めるのと一緒です。

もし風の速さ(風速)と物体の温度の下がり方(熱の移動量)が比例していれば、下がった温度から風速を算出することが出来ます、
よね?
条件として物体と周囲の温度(差)がわかっていなければなりませんが。

→口をすぼめて吹くのと、大口を開けて吹くのとでは、吐く息の速さが違います。
芋の冷め方も違うでしょ?

実に都合が良いことに、20世紀の初め頃(100年以上前)にモントリオール大学のルイ・V・キングという人が

”失われる熱は風速の1/2乗(平方根~要するにルート√です)に比例する”

という近似式を発表してて、
熱線式風速計を製造している各メーカーはみ~んなこれを基本にしてます。
ガッチャガッチャマンは英語弱いので論文の中身はよくわかりませんが、
読んでみたい人は、

http://rsta.royalsocietypublishing.org/content/214/509-522/373

へどうぞ。

※キング:ルイ・V・キング(Louis Vessot King1886~1956カナダ)
キングの式の考案者。発表時点でモントリオール大の物理学助教授
※論文もroyalsocietypublishingにあるようです。

 

キングの式

さて、物体の温度が下がると風速がわかるようになりました。
例えば、計測を開始して10秒で1度下がりました。
このときに風速1mだったとしましょう。
次の10秒でもう1度下がったらそのときも風速1mでしょうか?

実はそうではないのです。

”失われる熱は風速の1/2乗(平方根)に比例する”

と書きましたが、比例には比例係数というものがあるんです。
普通の一次式での

y=ax+b

における”a”がそれにあたりますが、このキングさんの式では係数の中に

”物体と周囲の空気との温度差”

という項目があるのです。
今の例でいうと2回目の計測では物体と周囲の空気との温度差が1度減ってるので、風速は一度目(1m)よりも大きくないと1度下がりません。
3回目にはトータル2度下がってるので更に・・・・

→物体の温度と周囲の気温の差が10度あったとすると、
最初の風速が1mだとすると次の風速は1.21m、3回目は1.56m、5回目には4m、9回目(2度差から1度差にする)では風速25m!
10回目は何と風速100mって。

これらは簡易計算なので実際にはもっと大きな数値になります。
最後には物体の温度と周囲の空気の温度が等しくなってしまい、いくら風が当たっても温度が下がらなくなります。
これではまずいので、実際の計測機では熱線を一定温度になるように(温度計で監視しながら)加熱してます。
これを素子として使用することで物体と周囲の空気の温度差を保ち、連続計測を可能にしているわけです。

え、物体の温度変化がないのにどうやって測るかって?

物体の温度(高温)を維持するために加えられる電流量を計測すれば、これも失われる熱を補完する量なので風速に比例するのです。
これなら常に1度分の熱量(電力)が失われると風速1mって答が出ます。

以上が熱線式の簡単な説明で、風に当てるための熱線、熱線を加熱する電源と計測器、熱線の温度を計測する温度計、周囲の温度を計測する温度計、
以上があれば風速計を作れてしまうってことです。

 

各メーカーの創意工夫

実際にはそう簡単ではないので、各メーカーが色々工夫を凝らしてるようです。
例えば日本カノマックスでは計測時に気圧の変化があると計測結果に差が出るということで、気圧計測も同時に行って精度を上げる方法について特許取ってるみたいです。

熱線式風速計は可動部分が無いことと小型化が簡単なことから、微風速の場合や狭いとこ
ろの計測によく使われます。
さて、ここで質問です。
熱線式風速計が使えない・使ってはいけない状況があります。
どんなときでしょうか。

これまでの話では”物体と周辺の空気”という書き方をしていたのですが、正式には”周辺の気体”です。
ということは”可燃性気体”(例えばメタンやプロパン)である可能性もあるんですね。
メタンやプロパンのガス流を計測しようとして熱線式風速計のヒーターを近づけたらどうなるでしょう。

ドカン!

ということで、可燃性気体が存在する可能性のあるところでは熱線式風速計を使ってはいけません。
そのような環境向けにはベーン式(小さな風車がついています)風速計などがよく使われます。
レックスでは出荷の際に出荷前点検(ちゃんと動作するか、指示値は正確であるか、付属品は揃っているか、など)を行っています。
本来は使用直前にも動作確認をするべきなんですが、風速の場合は角度や距離などのように簡単に使用できる基準がなかなかないので、そのまま当社を信頼していただくしかありません。

 

どうしても嫌って?

仕方がないので、自動車を用意していただきます。
助手席の窓から風速計を出した状態で一定速度で走って下さい。
その時の時速÷3600で風速が計算できます。
例:時速36kmで風速10m/sec、時速40kmでは風速11.1m/secになります。

合いました?

車のメーターが正確であるとか、運転が一定速度で安定しているとか、手持ちの風速計が動かないとか、
色々難しい条件がありますが、理屈の上ではそこそこの値が出るはずです。

これでも嫌な場合はちゃんと風洞作って・・・・
そんなこと出来るんだったら風速計をレンタルする必要はないですね、
失礼しました。

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あなたは単位の意味を分かろうとする?あきらめる?【基本編】

こんにちはー。

家庭内ホームレス・ISO爺マンです。

さて、本ブログのシリーズものとして、計量・計測の基本である「単位」の話を取り上げたいと思います。

まず、こんなことを書くと、

偏見だ!

と非難されそうなんですが、私個人の経験則からすると、文系とくに女性の場合、きわめて単位に弱いですね。

例えば、リットルLって何の単位?と質問すると、

「重さ」

と答えるのはまだマシな方で、

「水?..液体の単位?」

と質問の趣旨さえ分かっていない答えが返ってきたりします。

まあ、日常生活には何の支障もないので、問題ないのでしょうけど。

 

とはいうものの、計測機器専門レンタルの当社の社員がそれではちょっと困るので、
この場を借りて、そんな社員の啓蒙を兼ねてお題にしよう、
というわけです。

まず、「単位」の区別というか分類ですが、

「個」・「人」など数の数え方の単位、

「円」・「ドル」などのお金の単位、

「パーセント」・「割」・「ダース」などの割合・分率や一定倍数の単位、

そして、「メートル」・「グラム」などの計量単位(物理単位ともいう)があります。

(えーと、他にもあったっけ? ま、独断でこれだけということにします)

もちろん、ここでは計量単位を取り上げるわけですが、実を言うと、計測器の表示値の単位でも、けっこうアヤシイものもあったりします。

 

 

 

基本の単位のお話

まず、計量単位を突き詰めていきますと、基本単位というのに集約されます。

国際的に共通して認められている単位にも、様々な単位があります。

しかし、その大半はこの基本単位に置き換えて表記することができるのです。

 

例えば、力のニュートンNはkg・m/s2、圧力の単位パスカルPaはN/m2なので、kg/m・s2となります。

体積の単位リットルLはdm3です。

これらを組立単位と言います。

 

因みに、リットルは昔(私が学校で勉強していた頃)は筆記体のlで表記されていましたが、
筆記体を使用することが禁止されて小文字のlのままだと1と混同してしまうため、
現在は大文字のLで表記するのが一般的となっています。

さらに、m3の前に付いているのはデシで、1/10を示す計量単位の接頭語です。

1/10 m×1/10 m×1/10 mで、1/1000 m3というわけです。

よく天気図に出てくるヘクトパスカルhPaも、
100倍を表すヘクトhをパスカルPaにくっつけたもので、
1000hPaは、100000Paということになります。

ついでに一覧を書きますと、

 

  • 倍量を表す接頭語

デカ
da:×10
ヘクト
h:×100
キロ
k:×1000
メガ
M:×1000000
ギガ
G:×1000000000
テラ
T:×1000000000000

 

  • 分量を表す接頭語

デシ
d:1/10
センチ
c:1/100
ミリ
m:1/1000
マイクロ
µ:1/1000000
ナノ
n:1/1000000000
ピコ
p:1/1000000000000

 

まだまだあるんですが、0が多過ぎて書き切れないので、後は自分で調べて下さい。

 

 

基本の単位のお話

さて、基本単位に戻ります。

これは組立単位と違って、これ以外では表すことのできない、まさに計量の基本となる単位のことです。

7つあります。

 

 

長さの単位 メートルm
質量の単位 キログラムkg
時間の単位 秒(セコンド)s
温度の単位 ケルビンK
電流の単位 アンペアA
光度の単位 カンデラcd
物質量の単位 モルmol

 

 

因みに、キログラムkgだけ接頭語キロkが付いているのは、単位の定義の元となる原器が1kgだからです。

でも、だからといってミリキログラムmkgなんていう使い方はしません。

他の単位と同様に、µg、mg、g、Mgというふうに使います。

また、ケルビンKは、私たちが通常使う摂氏度℃と0の位置が変わるだけで、1単位の温度差は同じです。

0℃が水の三重点(水が個体・液体・気体の状態で同時に存在できる温度)なのに対し、ケルビンKは絶対零度(-273.15℃)が0となります。

さあ、ここで、文系の私にどうしても理解できないのが、モルmolです!

大昔、中学か高校の授業で出てきたような気がします。

...でも、それだけです。

 

モルmolの定義:

「0.012キログラム(kg)の炭素12の中に存在する原子の数に等しい要素粒子を含む系の物質量」

 

こんな訳の分からない単位は、一生関わることはないだろう、
と思っていたんです。

ところが!

当社のレンタル取扱機種に、このmolが出てくる単位が使われているのですよ!

µmol/(m2・s) なる単位です。

見た目だけで判断すると、光量子は、
1秒間・1平方メートル当たり百万分の何mol というふうに捉えるようですな。

実は、このブログを書くにあたって、ウェブサイトでmolを説明してくれるページを探して勉強したんです。

読んでいるうちは、少し分かったような気になりました。

でも、翌日になったら、やっぱり分からん!
に逆戻りしてしまいました。

 

結論!:
私は光量子計には近付かないようにします。

以上です。